「バーチャル花壇」でご近所が団結、街中を彩る笑顔とARフラワー

日本の商店街でARグラスを着用し、周囲を見つめて微笑むさまざまな年代の人々の写真。 VR・AR
AR技術で彩られた商店街を歩きながら微笑み合う人々の様子。

仮想現実技術を使った新しいコミュニティイベントが、埼玉県桜市で話題を呼んでいる。高齢者から小学生まで世代を越えて参加できる「みんなのバーチャル花壇プロジェクト」は、現実と仮想が心地よく溶け合う体験を通じて、まちの人々に優しさとつながりを届けている。

昨秋、商店街の一角に小さなバーチャル花壇のポータルが設置されたことをきっかけに、プロジェクトは動き出した。参加者は自宅からスマートグラスやタブレットを使って、お気に入りの花やオリジナルアバターの花を仮想空間上の街並みに植えることができる。商店街を歩く人々のARグラスには、町内のみんなが育てたカラフルなデジタルフラワーが次々と咲き誇り、道行く人たちが微笑み合う光景が広がった。

中心メンバーであるエンジニアの風祭千尋(35)は「普段は顔を合わせない人の花も、AR空間ではすぐ隣に咲いている。おばあさんの野菜アバターや小学生の虹色ひまわりを見ると、不思議と話しかけたくなります」と語る。また、商店街の藤島惣兵衛商店主(62)も「デジタルな花でも、ここに確かに“みんなのぬくもり”がある。新しい形のご近所付き合いじゃな」と目尻を下げた。

プロジェクト最大の魅力は、思いやりが花という形で可視化される点だ。人目を引いたのは、体調を崩して入院していた主婦の大垣美沙子(48)が退院祝いで贈られた“おかえり椿”。彼女がグラスを外に向けると、ご近所有志がアプリを通じて植えてくれたたくさんの椿のAR花が彼女の帰宅路を包んだ。「涙が出るほど幸せでした。誰もが、ちょっとしたひと言や気持ちをお花で表せる。見知らぬ人とでも優しさがつながっていくのが嬉しいです」と大垣さんは笑う。

SNSでも大きな反響があり、「街を歩くだけで元気のおすそ分けがもらえる!」「遠くの家族が花を植えてくれて涙」「リアルの花壇だと季節ごとに終わってしまうけれど、ここなら思い出と一緒にずっと咲き続ける」と温かいコメントが相次いでいる。プロジェクトの今後について、風祭さんは「誰かの今日の気持ちが、違う誰かの明日を明るくできる。人のやさしさが絶えずつながる仕組みを、もっと広げていきたいです」と意欲を語っている。仮想と現実が交わるこの街の花壇は、これからもたくさんの微笑みを咲かせてくれそうだ。

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