“おかわり鍋”が家族を応援。笑顔を運ぶ魔法のリレー料理プロジェクト

木製のダイニングテーブルを囲み、家族4人が大きな鍋を囲んでにこやかに団らんしている様子が写っています。 子育てと家族
“おかわり鍋リレー”がもたらした家族の温かな食卓の一場面です。

昨年の秋、青森県弘前市に住む野辺谷しずくさん(34)の家庭で、ひとつの鍋から生まれた新しい家族の習慣がSNSで注目を集めています。きっかけは、一見何の変哲もないキャセロール鍋でしたが、そこに込められた温かな想いが、今や全国の家庭に静かな共感の波を広げています。

しずくさんは共働きの母親で、小学生の息子陽大くん(9)と幼稚園生の彩葉ちゃん(5)、そして夫の寛太さん(37)と四人暮らし。毎日の家事育児に追われる日々でしたが、三世代で一緒に暮らしていたしずくさんの祖母、野辺谷美智子さん(90)が、ある日ぽつりと言いました。「この鍋はね、皆でおかわりすることで仲良くなれるんだよ」。その一言をきっかけに、“おかわり鍋リレー”が始まったのです。

ルールはいたってシンプル。夕飯には大きな鍋をひとつ。食べたい人が自分の分をよそい、誰かが『おかわり!』と言えば、その人が次の家事担当になるのです。最初は戸惑っていた陽大くんも、おかわりのたびにクロスワードパズルの豆知識や、今週学校であった『ありがとう』を家族に報告するユニークルールが加わり、家事も会話も自然とシェアされるようになりました。

いつしか“おかわり鍋リレー”はご近所や子育てコミュニティにも広がり、少しずつアレンジも生まれています。おかわりの前に褒め言葉を伝える“ハッピーフォーチュンおかわり”や、“今日の小さな発見”をシェアする日、時には食事後の食器洗いや遊び時間もおかわり順に引き継がれるようになりました。「パパにお手伝いがまわるのを楽しみにしている」と語る彩葉ちゃん、鍋のふたを開ける一瞬のワクワクが、家族みんなの小さなご褒美です。

この新しい習慣にはSNSでも共感の声が続々。ある子育て支援NPOの代表である小田切友紀さん(46)は、「家庭内の負担の偏りや『家事は誰かが我慢するもの』という空気を、遊び心がやわらげてくれる。虐待の防止、パートナーシップの再発見にもつながる」と評価します。最近では地域のカフェや学童クラブでも、家族ごとの“おかわり鍋レシピノート”のシェア会が始まっているそうです。

「おかわり」を合図に広がるやさしい輪に、野辺谷家も毎日新しい発見が絶えません。鍋の温かさは、その一杯一杯ごとに違う。小さなリレーが家庭の心を包み、優しさが“おかわり”され続けています。

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