毎週水曜日に届く“謎の愛妻弁当”、三世代でつなぐごちそうリレー

日本の住宅街の玄関先に手作りの木箱に入った弁当と手紙、家族写真が並んで置かれている様子。 家族とコミュニティ
“水曜日のおすそわけ”で届けられる木箱入りの愛妻弁当が、住民同士の心をつないでいます。

小さな町・新緑市の住宅街で、あるユニークな交流が静かな話題を呼んでいます。それは、「水曜日のおすそわけ」と呼ばれる、見知らぬ誰かから届く“謎の愛妻弁当”。このささやかな贈り物が、地域の家族やご近所さんの心を優しくつなぎ始めたのです。

始まりは、佐野陽子(72)さんが数カ月前に夫を亡くし、ひとりきりの昼食に寂しさを感じていたこと。ある日、水曜日の午前中に玄関先に手作りの木箱とともに温かいお弁当が置かれていました。おかずは煮物や卵焼き、そして見覚えのない家族の写真。“あなたとおしゃべりしたい新米パパより”という添え書きが添えられていたのです。驚きつつも感謝の気持ちでお返しをと、陽子さんも自身お手製のおはぎを木箱に入れて、写真の主宛てに自宅前に置き返しました。

その後、木箱は様々な家を巡り始めます。保育園に通う福田みつき(5)くんと、その父・康平さん(35)が次に送り主となり、今度は『ママがつくったカレーサンド』と、子育ての悩みを書いたメモが添えられていました。木箱におすそわけが入る度、SNSの秘密グループ『ごちそうリレー@新緑』では感動とエールのコメントが絶えません。

やがて、ご近所の大学生・三井かなえさん(21)や、子育て世代の鈴木舞さん(31)親子も参加。みなそれぞれの得意料理を詰め、時に手紙や折り紙、折々の悩みや小さな幸せの報告も木箱に託します。お弁当は簡単な料理でも、みんなの気持ちが詰まっています。たとえば『悩んでばかりの私でも、陽子さんのおはぎで元気が出ました』といった感謝の言葉が、毎回誰かの心を温めます。

この試みは、地元の保育園園長である永島幸男さん(58)がさりげなく見守り役を買って出ており、『地域みんなの“おかえり”が聞こえる町になった』と語ります。近年薄れていたご近所付き合いが、世代も立場も異なる人々の手作り弁当と交換日記で自然と復活しつつあるのです。今では「水曜日が待ち遠しい」「来週はどんな味かな?」と町全体が和やかな気持ちに包まれています。

ある日、木箱には幼い子どもが描いた未来の家族の絵と、『いつかみんなで一緒にごはんを食べたい』というメッセージが入っていたそう。今、この町には“顔が見えないけれど、見守り合える家族”が、生まれつつあるのかもしれません。

コメント

  1. 子育てで毎日バタバタですが、こういう温かいつながりが近くにあったら本当に心強いなぁと思います。うちの町にも“ごちそうリレー”あったら参加してみたい!みなさん本当に素敵ですね。

  2. なんとも懐かしい話で、若い頃のご近所付き合いを思い出しました。持ち寄りやおすそわけが当たり前だった時代を思い出して、少し目頭が熱くなりました。こんな優しさが今でも残っているのですね。

  3. 大学生でも参加できるって聞いて、ちょっとびっくりです。最近は地域との接点が無かったけど、みんなでごちそうを回すって楽しそう。うちのゼミでも真似してみたいなって思いました。

  4. みんな優しいな〜。毎週水曜にはうちの前もいい匂いがして、なんだか自分まで元気をもらえます。小さい子まで参加してて、町全体が家族みたいですごく嬉しいです。

  5. こういうご近所の助け合い、正直ちょっと羨ましいです。一人親はなかなか誰かに頼る機会がないから、あたたかな交流を見て心がほっこりしました。息子と2人、たまには誰かのお弁当も食べてみたいな。