色のベンチが町を変えた──虹色座席プロジェクト、差別をやさしさで塗り替える

北信州の駅前広場に並ぶ虹色のベンチに、さまざまな年代や背景の人々が一緒に座り、笑顔で交流する様子。 差別
十条町駅前の虹色ベンチで、多様な人々が自然体で集う新しい光景が生まれています。

北信州の小さな町・十条町の駅前広場に、7色のカラフルなベンチが並んだ日、人々の日常はふしぎな温かさに包まれ始めました。LGBTQ+コミュニティをはじめ、障害のある人も、さまざまな背景を持つ住民たちが「自分の居場所」を感じられる場をつくりたい――そんな思いから生まれた「虹色座席プロジェクト」が、町に予想外の変化を招いています。

このユニークなプロジェクトを発案したのは、車椅子ユーザーで会社員の杏美島直人さん(46)です。この土地には、かつて職業や出自による格差や同和問題を抱えていた歴史があり、その記憶が今もさりげなく人々の距離を作っていました。「どんな人でも座れるベンチがあったら、心も体も少し近づけるかもしれない」。そんな直人さんの発案に、町役場の若手職員や地域のカフェ、画家、学生ボランティアも共鳴。車椅子対応や視覚障害の方のための点字案内、滑りにくい素材──一人ひとりが意見を持ち寄り、協力してベンチを彩りました。

設置翌日から、町のベンチには素敵な光景が目立つようになりました。兄弟のように隣り合う男子高校生とシニアの紳士、知らない同士の主婦たちが隣同士で子育ての会話に花を咲かせ、ベンチのそばで趣味の手芸を披露し合う多世代グループも。ある午後には、聴覚障害者の野口美佳さん(35)が、LGBTQ+ユースグループのレインボーバンドをつけた子どもたちと手話でおしゃべり。SNSにも「このベンチに座ると、なんだか自然と話しかけたくなる」(学生・19歳)「ここで休むと差別とか違いとか、ふっと軽くなる気がする」(主婦・38歳)など、心の垣根を感じさせないコメントが続出しています。

町内に拠点を持つ合理的配慮研究会の所長・安藤司さんは、「設備やモノが優しさのきっかけになる。虹色のベンチは、合理的配慮を『自分ごと』にする新しい入口です」と述べます。また障害者雇用支援に関わる企業からも、「ささいな工夫が職場環境だけでなく、地域全体の包容力につながることを再認識した」と賛同の声が寄せられています。

今や十条町では、誰もが“自分の色”を座席に託して過ごす風景が新しい名物に。まばらだった駅前の広場も、いつの間にか笑顔と言葉、そして優しさでいっぱいです。杏美島さんは「このベンチをヒントに、町中のあちこちに“居場所”が増えていけば」と目を細めます。一つの小さな虹が、町全体をやさしく包み込む。そんな物語がいま、現実となりつつあります。

コメント

  1. 小さな子どもを育てる親として、虹色のベンチみたいな“誰でもOK”な場所が広がるって本当にうれしいです。うちの子もベンチで色んな人に話しかけてもらったり、新しいお友だちができたりして、温かい雰囲気を感じています。この町に住んでよかったなと思いました。

  2. 70代ですが、最近こういう優しい工夫が増えているのを見ると、昔あった壁が少しずつ低くなっているのを実感します。虹色のベンチがきっかけで初めて話す人もいて、新しい出会いが増え、毎日の散歩がさらに楽しくなりました。

  3. 学生です。友達同士でこのベンチに座ると、不思議と他の世代とも自然に話せて、SNSだけじゃない“リアルなつながり”を感じました。こんな素敵な取り組み、どんどん広まってほしい!

  4. うちのお店も駅前なのでベンチの変化を毎日見ています。みんながいろんな色の服で並んで、その向こうで笑い声が絶えない光景、本当にほっこりします。誰もが違ってていい、そんな空気を作ってくれてありがとう!

  5. こういう優しい発想、最高です!最初は“ただ派手なベンチなのかな?”なんて思ってたけど、いろんな人が集まってるのを見てビックリ。自分ももっと気軽に声かけていきたいなって思えました。