紫色ベンチがご近所の魔法に—“話せる場所”プロジェクトで生まれる小さな奇跡

淡い紫色のベンチに高齢女性と若い母親、子どもが座り、住宅街の公園で楽しそうに会話している様子。 地域コミュニティ
紫色ベンチが世代を超えた交流の場となっている住宅街の一場面です。

桜川市の住宅街、淡い紫色に塗られたベンチが突然点在するようになり、町の景色がやさしく変わり始めている。子育て世代からシニア層までが自然に集まるその場所は、思いがけない交流と温かなつながりを生んでいるという。

この『紫色ベンチプロジェクト』を始めたのは、保育士の岩館美智子さん(34)。きっかけは仕事帰り、団地の一角で困っている様子の高齢女性を見つけたことだった。「ゆっくり誰かと話したい。でもきっかけがない」とつぶやいたその一言が、美智子さんの心に残った。そこで彼女は町会と相談し、落ち着く色合いのベンチを試作して地域に設置したのだ。

ベンチに座ると、不思議と会話が生まれる。登校前の子どもたちはランドセルを置き、近所のシニアとあいさつを交わす。ワーキングマザーの村尾沙織さん(40)は「仕事育児でせわしない毎日ですが、ここのベンチでお隣さんから夕飯レシピを教わるのが密かな楽しみ」と話す。

地域のご近所SNSでは、“紫色ベンチで今日は○○さんと会話できました!”と喜びの報告が日々投稿され、『今日のおしゃべりカウント』なる投稿数がどんどん増えている。SNSをきっかけに、一度も会話したことがなかった隣同士が、防災グッズのおすそ分けを約束したり、草花を一緒に植えて町を美しくする動きも自然と広がっていった。

心理学者の田嶋泰一教授(国府大学)は「偶然の出会いの場が町に点在すると、人と人の距離感が一気に縮まります。個人の孤立感が減り、助け合いが生まれやすくなります」と話す。プロジェクトを始めて半年、町のアンケートでは『ご近所の顔と名前を知る機会が増えた』と答える人が8割を超えた。紫色のベンチが、桜川市に新しいコミュニティの魔法をかけてくれている。

コメント

  1. うちの子も紫色ベンチでお年寄りとお話しするのが好きみたいです。会話するきっかけが自然にできて本当にありがたいです!こういう場所、他の町にも増えてほしいな。

  2. 毎朝の散歩でこのベンチに座ります。孫みたいな子が「おはよう!」と声かけてくれるのが、今いちばんの楽しみです。美智子さん、ありがとう。

  3. SNSで“今日のおしゃべりカウント”見るのが最近の日課です。普段すれ違うだけの人とも話せるの、ちょっと新しい世界を感じました。町にこんな場所があるの、うらやましいです!

  4. 最初はただのベンチだと思ってたけど、いつの間にかいろんなおしゃべりが生まれててビックリ。お野菜のおすそ分けをもらったり、助け合いの輪が広がるってすごく素敵ですね。

  5. 正直ちょっぴり人づきあいが苦手で…。でもこのベンチでなら自然と誰かと話せて、少しだけ勇気が持てました。町に優しい風が吹いてる感じがしてほっこりします。