親子でつなぐカセットテープ祭り Z世代が選ぶ“私のB面”改革

町の小さな会館で世代を超えた人々がカセットテープやノートを囲み楽しげに交流している様子。 ジェネレーションギャップ
伊賀原町のカセットテープ祭りでは親子や地域の人々が思い出や未来のメッセージを交換しました。

長野県の里山に囲まれた伊賀原町で、世代を超えて人々の心を結ぶ“カセットテープ祭り”が今年初開催された。流行のレトロブームとZ世代の自由な発想が、親子の絆と地域の温もりを育む新たなイベントとして、にぎわいを見せている。

この祭りの立案者は、大学生の野本仁美さん(21)。 コンサートやライブに夢中な父・昇志さん(51)が、昔聞いていたカセットテープを譲ってくれた体験がきっかけだった。仁美さんは「うちのリビングには見慣れない黒いテープが積まれていて、最初は“時代遅れ”だと思っていたんです。でも父が好きな曲を私に歌ってくれた時、言葉を超えて感じ合えるものがあると気づきました」と、当時を振り返る。

父と娘は町内の同世代に声をかけ、自宅に眠るカセットを一人一巻持ち寄って、お気に入りの“B面”だけを交換し合う計画を企画。これに地域のシニア世代や地元の子どもたちも賛同し、あっという間に50本以上の“年代別B面セレクション”が完成した。

イベント当日は、小さな会館を舞台に親子連れや祖父母世代など多様な年齢層が集結。カセットの音を初めて聴くZ世代の若者が不思議そうに再生ボタンを押せば、懐かしいメロディや当時の自作ラジオ番組が次々と流れ出した。子どもたちは手作りのラベルで“私の未来B面”を制作し、未来に聞かせたい音声メッセージや交換ノートを録音。なんと最新のAI技術を使い、昭和の不朽の名曲と現代のヒット曲をミックスして自作テープを作ったZ世代も登場し、「技術はタイムトラベルのカギ」とSNSで話題を呼んだ。

専門家である生活史研究家・戸田実さん(40)は、「こうした“思い出メディア”の相互交換は、世代間で価値観や責任観念を自然に語り合う貴重な場。カセットはアナログとデジタルの進化が共存できる象徴的存在」とコメントする。参加した小学3年の高橋未来さん(9)は「パパが子どものころの声を初めて聞いて不思議だった。わたしも30年後の自分に手紙テープを残したい」と目を輝かせた。

イベント後には“B面交流ノート”が町内に回され、カセット祭りは毎年秋の恒例行事となることが決まった。親も子も、笑い声や時々真剣な議論までもがテープに刻まれていく。伊賀原町の空には、今日も新しい思い出の音がやさしく流れている。

コメント

  1. とても素敵なイベントですね!うちの子も最近、私の古いカセットを面白がって聞いています。世代をつなぐこういう取り組み、どんどん広まってほしいです。伊賀原町まで行ってみたくなりました。

  2. カセットって逆に新鮮で面白そうですね。自分たちの声とかメッセージを録音できるのもいいなと思いました。AIでミックスするの、今度友達とやってみたいです!

  3. 昭和時代はテープが宝物だったんじゃ。まさか今の若い子たちとこうやって楽しめるとは驚きです。B面にはみんなの“本当の気持ち”が詰まっとるんだろうね。うれしいニュースじゃ。

  4. この企画を考えた野本さんに拍手!親子でお互いを知り合うきっかけになるなんて最高。アナログの温かさもデジタルの進化も、どちらも大切にできる町がうらやましいです。

  5. 娘が『未来の自分にメッセージを送りたい』って言い出して、家族でカセット探しを始めました。昔は当たり前だった“B面”が、今こんなふうにつながるとは。親としてもなんだか胸が熱くなります。