秋色の山里を縫うように走る自転車のバーチャルグラベルレース。その途中、小さな村で、思いがけないほっこりする交流が生まれた。全国から集まったサイクルコンピューター片手の選手たちが、見知らぬ土地で故郷のような温かさに包まれた物語だ。
大会は、長野県と岐阜県の県境をまたぐ新設バーチャルレース『グラベルハート・ライド』。サイクルコンピューターによるリアルタイム中継と、現地の地形や気象を再現したAR(拡張現実)が楽しめる新感覚イベントだ。そんな最中、コースの中盤にある人口わずか96人の嶺村(みねむら)で突如、補給食をめぐる“小さな奇跡”が起きた。
レース中盤、グラベルバイクで奮闘する大学生ライダー・四方舘勇斗(22)は、持参した補給食をすべて落としてしまい、意気消沈して村に差しかかった。そんな折、村の母親会会長・斉木はな(58)が、路肩で手作りの“いももち”を選手たちに配る光景がSNSで話題に。「勇斗くん、大丈夫?これで元気出して」と、はなが彼に手渡した温かいいももちは、まるで太陽のような存在感だった。
斉木さんたち母親会の面々は、前夜から村の野菜で補給食を作り、シクロクロス愛好家の孫たちと一緒に応援のぼりを立てていた。選手たちが次々と笑顔で立ち寄り、村の広場は即席の“補給食村”に早変わり。バーチャルレース中継では、食べると心拍数が安定する“魔法のいももち”として全世界のサイクリストたちの注目を集めた。海外の実況解説者も「ライダーと地元の絆が温まる、最高のシーン」と称賛を送った。
レース後、勇斗は「優勝以上の宝物をもらいました。この村の温かさを、僕も誰かに渡したい」と語った。補給食村のおもてなしは、いつしか毎年の恒例に。村の小学生チームが独自に開発した野菜ジャムパンをお土産に選手へ贈るサイクルイベントも誕生し、“笑顔が連鎖する村”として全国から観光客が訪れるようになった。SNSには『嶺村のいももちを食べてみたい』『仮想と現実がつながる場所』と称える声が溢れ、土地の人もライダーも、ゆるやかな幸福感に満たされた日となった。
コメント
とても素敵なお話ですね!同じ子育て中の母親として、嶺村のみなさんの優しさには胸が熱くなりました。世代を超えて笑顔が伝わるって、こういうことなんだなぁと感じました。私も誰かの力になれる人になりたいです。
いや〜昔の村祭りを思い出します。最近は人のつながりが薄れてるなんて言われるけど、こうして若者と村の人が心を通わせられるなんて、まだまだ日本も捨てたもんじゃないですね。いももち、ぜひ食べてみたいなぁ。
補給食ってこんなに心がこもるイベントになるんか!テクノロジーだけじゃなくて、リアルな人のあたたかさがあると全然違うよね。僕も今度、部のみんなと嶺村のライド行ってみたいッス!
嶺村の方々、そして勇斗くんのエピソードに朝からじんわり癒されました。普段忙しい都会で暮らしているので、こういう温かい交流を見ると心がほぐれます。仮想と現実がつながる…新しい形のイベントに感動です!
お隣の村ですが、嶺村さん最高です(笑)あそこのお母さんたち、本当にいつも元気で親切なんですよ。うちも負けてられません!来年は協力イベントにしたいですね。