静かな住宅街のはずれに、近年ひときわ賑やかなアパートメントがある。世界13の国や地域から集まった住民たちが一つ屋根の下で暮らす「虹色共生アパートメント」だ。そこには毎日、多様な言葉と料理、そして小さな思いやりが交錯する。寛容と共生の“実験住宅”として、今やSNSで話題を呼ぶ場所となった。
虹色共生アパートメントは難民認定を受けた家族や留学生、日本で生まれ育った子どもたちを含む全32世帯が暮らす。管理人を務める渡辺アリサさん(38)は、「ここでは“やさしい日本語”を合言葉に、どの国の人も自分の母語で気兼ねなく会話します。困った時は英語、イラストや翻訳アプリも活躍中。片言同士が通じ合うからこそ、心も近づくんです」と笑う。宗教上の配慮も徹底し、食事の共有や祈りのスペースが設けられているという。
毎週木曜日の夜、住民交流会が開かれるのが恒例だ。食卓にはスリランカのカレー、シリアのピタパン、中国の水餃子、そして和食が並び、家族単位で得意料理を振る舞う。3歳のティエン君がベトナム語で「美味しい!」と叫ぶと、日本人の児童(7)が大きく頷いて親指を立てる。言葉の壁を越えた「おすそ分け」の輪は、世代も国籍も超えて広がる。見知らぬ国の歌がラジオから流れると、誰かが踊り出し、最後はみんなで拍手——この光景が、住民たちの毎日だ。
SNSでは「#虹色アパート」の投稿が1万件を超えた。親子で暮らすムハンマド・アミーナさん(42)は、「ここへ来て初めて、隣人に“困りごとない?”と声をかけてもらえました」と発信。近隣住民も「国が違っても、一緒に掃除やお祭りを楽しむうち自然と仲間意識が芽生えた」とコメントしている。専門家の村松圭一教授(多文化共生学)は、「各自が母語や文化を誇りに感じつつ、違いの中に新しい共通点を見つけている点が画期的だ」と評価する。
2025年春には、虹色アパート初の「共生夏祭り」が開催予定だ。屋台では各国の料理がふるまわれ、世界の遊びや伝統工芸の体験ブースも並ぶという。企画に関わる主婦(50)のサミラ・ロペスさんは「私たちの違いが、この町の新しい財産になる。子どもたちがどの国の挨拶も自然に口にできる未来を、もうここで見ている気がします」と語る。多文化共生の小さな実験室から、あたたかな波紋が広がり続けている。


コメント
小学生の息子を育てているので、虹色アパートの記事を読んですごく希望が湧きました。色々な国の料理や言葉を楽しめる環境、とても素敵ですね。子どもたちが自然に国境を越えて友達になれる場所がもっと増えるといいなと思います。
いやぁ、昔は考えられなかった光景ですな。色んな国の人たちが一緒にご飯食べてるなんて、昭和の時代じゃ夢物語。でも、今こうして本当に共に暮らせる時代になったんだなあと、なんだか心があったかくなりました。
多文化共生って、教科書ではよく聞くけど、こんな形でリアルにやってる場所があるなんて初めて知りました!SNSで流行るのも納得。自分も短期留学経験があるので、みんなで分け合う感じすごく共感します。
私も近くに住んでて、アパートの皆さんとお祭りで知り合いました。違う文化同士でも、笑顔やあいさつのパワーは本当にすごいって実感しています。夏祭りの開催すごく楽しみです!
アパートの取り組みは素敵だと思う反面、実際に日常トラブルとかはどう解決してるのかな?文化が違うと誤解も起きそうだけど、交流会や“やさしい日本語”でカバーしてるって本当すごい。見習いたいですね。