澄みきった秋空の下、全国マラソン選手権大会で思いがけない出来事が起きた。一足のランニングシューズに付けられた名もなきシューズタグが、一組の家族を再び結びつけたという物語が、今多くの人の心を温めている。
ランニングが趣味の公務員・本多正明さん(45)は、娘の夏芽さん(17)が暮らす寄宿学校のある町で開かれたマラソン大会に初めて出場。父娘ともにランナーだが、生活のすれ違いから夏芽さんの成長期を共有することができなかった。実はこの大会に、本多さんは直接連絡が取れない夏芽さんへ、応援の気持ちを込めてごく小さな紫色のシューズタグを贈ってあった。しかしタグは夏芽さんの手元に届かぬまま、手違いで大会本部の貸出用シューズに付けられてしまった。
レース当日、懸命に走る夏芽さんがエイドステーションでゼッケンに手をやると、スタッフが『こんな可愛いタグ、初めて見ましたよ』と見せてくれたのが、あの紫色のシューズタグ。偶然にも、スタッフの手伝いで預かった貸出シューズにそれが付いていたのだ。不思議な巡り合わせに、思い切って父を探してみる決心をした。
ゴール地点で夏芽さんはついに本多さんと再会。『タグにこっそりメッセージを入れたんだよ。誕生日、おめでとう』と父が話すと、夏芽さんは嬉しさのあまり涙を浮かべてシューズタグを握りしめた。ふたりの心の距離を縮めたのは、わずか3cmほどの小さなタグだった。二人が一緒にゴールテープを切る姿には、観客たちも思わず拍手を送った。
大会後、参加ランナーたちのSNSには『素敵な奇跡を目撃した』『私も誰かにシューズタグを贈りたくなった』といった投稿が相次いだ。大会事務局の井藤さやかさん(38)は『シューズやゼッケンだけでなく、思いがけない形で人と人が結ばれる。これがマラソンの醍醐味ですね』と語った。親子で並んで歩く二人の背中を眺める沿道の人々も、どこか足取りが軽やかになったという。


コメント
うちも息子が成長して手が離れてきたけど、こんな風に何かきっかけがあればまた気持ちが通じるんだなあと胸が熱くなりました。本多さん親子に幸せが続きますように!
いやあ、歳を取ると涙もろくなって困りますな。小さなタグ一つで家族がまたつながるなんて、昔のドラマみたいで心が温まりました。私も孫に何か贈りたくなりましたよ。
夏芽さんの勇気、本当に素敵です!受験で親とうまく話せない時期だけど、このエピソード読んで、素直に感謝を伝えてみたくなりました😊
偶然だなんて思えないくらい、すごくドラマチックでしたよ。まさに奇跡!親子でゴールする姿に、近所のおばちゃん達みんな拍手してました。元気をもらいました!
ハッピーな話で朝からいい気分になれました。普段はちょっと照れくさくてできないけど、たまには両親に感謝の気持ちを伝えてみようかな、と素直に思えました!