“野鳥のうた交換ノート”が町の橋渡しに──自然観察でつながる小さな奇跡

川沿いのベンチの上に、野鳥のスケッチや押し花が添えられた古びたノートを複数世代の手がそっと囲んでいる様子。 自然観察
世代を超えて受け継がれる“野鳥のうた交換ノート”が、町の人々の思いを優しくつなぎます。

穏やかな川沿いに広がる清新町で、不思議な“野鳥のうた交換ノート”が静かな話題を呼んでいる。町立図書館横のベンチにそっと置かれたそのノートには、まるで季節の手紙のように野鳥や野草の観察記録、短い詩やスケッチが寄せられ、町の人々の心を優しく結んでいる。

このノートの存在が知られるようになったのは、定年退職後に自然観察を趣味とするようになった小山一徳さん(68)が、野鳥図鑑を片手に町を歩いていた春の日。ふとベンチの下に挟まったノートを見つけ、ページをめくると、それは小学生・楠本みゆきさん(11)が、朝の散歩中に聴いたカワラヒワやシジュウカラのさえずりを書き留めたものだった。みゆきさんが「町の誰かに野鳥のことをもっと知ってほしい」という気持ちで始め、残していったのだという。

一徳さんは、自分でもその日見かけたハクセキレイのスケッチを添え、「誰かが同じ空を見てることが嬉しい」とメッセージを書き加え、そっとベンチに戻した。すると次の日には、散歩好きな主婦・向井優子さん(42)がハルジオンと野草の押し花を貼り、さらに年配の男性が「30年ぶりにコゲラを見ました」と記していた。ノートは町の人々の手から手へと渡り、まるで森や川を渡る小鳥のように、そこここで思い出や発見を乗せていった。

図書館スタッフの佐々木真由美さん(35)は、「本の貸し出しカウンターで“ノートのおかげで初めて隣の人と話せた”と報告してくださった方もいて、静かな共感の輪が広がっています」と語る。自然観察がきっかけとなり、普段は挨拶だけだったご近所同士が、野鳥や草花のことに花を咲かせ、昔の話や子どもの話題まで膨らむようになったという。

SNSでは「#野鳥のうたノート」に実際に書かれた観察ノートの一部が写真入りで投稿され、遠方から“その町の四季を、一緒に感じているようだ”とコメントが寄せられることも増えている。暮らしの中にそっと息づく自然と人のつながり。小山さんは「このノートが鳥たちのように町中を飛び回り、たくさんの笑顔が生まれるきっかけになれば」とほほえんだ。今日も誰かが、そっとそのノートに新しい観察を綴っている。

コメント

  1. 子供が最近外で鳥の声に耳を傾けるようになったのは、このノートの影響かもしれません。普段の暮らしにちょっとしたワクワクが増えて、親としてもうれしいです。こういう優しいつながり、大事にしたいですね。

  2. 懐かしい気持ちになりました。昔の町にはよく交換ノートや回覧板があったけど、今はデジタルばかり。こんなアナログな交流がまだあるのかと、温かくなりました。今度散歩がてら、ノートに何か書いてみようかな。

  3. SNSでも話題になってるけど、実際に町中でみんなが繋がれるってすごい!普段忙しくて自然を気にしてなかったけど、今度地元に帰ったとき散歩しながら鳥探してみたくなりました。

  4. 清新町に住んでいます。正直、最初ノートの存在に気づいた時は誰の忘れ物かと思いましたが、今では近所の人と話すきっかけにもなって、とてもありがたい存在です。子どもからお年寄りまで輪がつながるのが素晴らしいですよね。

  5. 店の前で見かけたスケッチや押し花、どれもやさしい気持ちがこもってますね。知らない誰かと自然を通して言葉を交わせるって、なんだか素敵。私も今度、季節の草花をそっと添えてみようと思います。