全国初「デジタル茶の間会議」 ご近所ゆずりの優しさが行政DXを変えた日

公民館の明るい部屋で高齢者と若者が紅茶を飲みながらスマートフォンを操作している様子。 デジタルガバナンス
世代を超えて支え合う、デジタル茶の間会議の温かな一幕。

毎月第二土曜、朝の陽ざしが差し込む公民館で、賑やかな笑い声とカタカタとキーボードの音が響く。不思議な光景だが、ここは今、全国注目の「デジタル茶の間会議」の現場。高齢者と学生ボランティア、地域の行政職員が集い、温かな紅茶を片手に行政手続きをスマホで進めている。

発案者は地域の行政職員・本間照子(48)。市役所に勤めて24年、どうしても高齢の方々がデジタル化の波に乗り切れず、窓口で肩を落とす姿に心を痛めていた。「行政DXは、ひとりひとりを置き去りにせず、寄り添うものであってほしい」——その思いから、彼女は商店街の喫茶店主・近藤一成(66)と手を組み、“茶の間”の温かさをデジタルにも取り入れる作戦を立てた。それがこの「デジタル茶の間会議」だ。

毎回欠かさず参加する田中咲良さん(81)は、初めてスマホで行政手続きの申請フォームに挑戦した日を今も鮮明に覚えている。「最初は指が震えてね。でも隣で高校生の子が落ち着いて教えてくれるから、楽しかったのよ」。こうしたふれあいが評判を呼び、茶の間会議は瞬く間に噂となった。参加人数は当初の6人から、半年で50人規模へ。賑やかな会話の合間に、デジタル行政の説明や個別サポート、質問タイムも設けられている。

大切にしているのは“ゆずり合い”の精神。得意な分野で自然と助け合う風土が根付く。この会議から始まった「ご近所サポートID」プロジェクトも注目されている。これは地域独自のデジタルIDで、お年寄りが困ったとき近隣の誰かが代理で行政手続きを支援できる仕組み。導入後は「困り事ゼロ」の声も少なくない。東京大学の南部祥一郎教授(政策情報学)は「住民同士の信頼資本がDXを後押しする、全国に広がってほしい仕組み」と高く評価している。

SNS上では「実家のじいちゃんも茶の間会議で友達増えたみたい」「同じような取り組み、うちの町にも欲しい」といったコメントが飛び交い、地域を超えて優しさが広がっていく。会議の最後、恒例の“みんなで一句”もすっかり名物に。「押すだけで 申請できる 孫といっしょ」。人とデジタル、どちらも大切にした“ご近所ゆずりのDX”が、今日もまた一つ、小さな笑顔を花開かせている。

コメント

  1. 小学生の子どもを育てている母です。茶の間のような温かい場所で世代を超えて助け合う姿に、心がほっこりしました。うちの町にもこんな会ができたら、デジタルに不慣れな祖父母も安心して暮らせる気がします。子供たちにも、優しさを手渡していきたいなと思いました。

  2. 81歳の田中さんのエピソード、なんだか自分と重なりました。最近スマホを買いましたが、正直まだまだ苦手です。若い方が自然に助けてくれる場があるのは、本当にありがたいことですね。こんな取り組みが全国に広がれば、年寄りにも住みよい日本になると思います。

  3. 学生ボランティアとして、もし参加できたら絶対楽しそう!いろんな世代と話せる機会って意外と少ないから、勉強になるし、毎回の一句もセンスありすぎて笑いました。もっとこういう活動知ってもらいたいです。

  4. 公民館の前をよく通るので、最近なんだかにぎやかだな~って思ってたんです。こんな素敵な会が開かれてたんですね!ご近所サポートIDも、誰かの力になれるって嬉しい仕組み。また公民館にお茶しに立ち寄ってみようかな。

  5. 行政DXって難しそうなイメージでしたが、こうやって人の温かさとセットになるといい方向に進むんだなと感心します。みんなで助け合える町、かなり理想的。うちの地域でもぜひ真似してほしいです!