公園の“虹色ベンチ”、出会いと多様性の架け橋に――日向市で広がる優しい輪

虹色に塗られたベンチに高齢女性と若い人が夕暮れの公園で温かく話し合って座っている様子。 ジェンダーと多様性
日向市の虹色ベンチが、世代や背景を越えて人と人をつなげています。

日向市にある小さな市民公園が、近ごろ静かな話題を集めている。カラフルな虹色模様のベンチがひとつ、暮れなずむ遊歩道の脇に据えられて以来、この場所は“ふらっと寄れば何か温かい出会いがある”と評判になっているのだ。色とりどりのペンキで塗られたそのベンチには、“誰もが座れる、誰かの居場所”という小さなプレートが添えられているという。

“レインボーベンチ”プロジェクトの発起人は、地元でカフェを営む中嶋詩乃さん(36)。“公園って、年齢も国籍も性自認も問わず、自然と人が交わる場じゃないですか。ただ、ちょっとしたきっかけがなくて隣に座りづらいことも多い。ベンチに虹を描いたのは、『ここはどんな人でもいていい』っていう、無言の合図になればいいなと思ったからです”。中嶋さんがSNSでアイデアを募ったところ、ペインターの川合隆生さん(28)、大学生の泉結花子さん(20)らも賛同し、1か月かけてベンチの色塗りやメッセージカード作りが進んだ。

このベンチに座ると、思いがけない出会いが待っていると評判だ。ある日の午後、70代の主婦・宮下蓮子さんはここで“女性と名乗る青年”と隣り合った。「最初は息子ほどの年齢の方で驚きましたが、虹のベンチに背を押されて話しかけてみたんです。自分を女性だと表現するのは初めてだと言っていて…その勇気に感動しましたし、お互いに笑顔で励まし合えました」。

また週末には、地元の中学校から性の多様性を学んだばかりの生徒たちが訪れ、手作りの“あなたの素敵なところシール”をベンチの近くに設置。「座った人の良いところを一つだけ、そっと伝えられる場になれば」。生徒の一人、佐原匠真さん(14)は、「家や学校では言いづらいことも、ここなら不思議と安心して話せる」と笑顔を見せる。

日向市役所も市民の自主的な活動に注目し、今年度の男女共同参画週間イベントの会場にレインボーベンチを“出張”させることを決定。また、同市のジェンダーギャップ指数が県下で一気に改善した背景には、「こうした日々の小さな優しさや対話が大きく影響している」と専門家も語る。

市のSNSには「勇気をもらえた」「ここで初めて素直な自分と出会えた」といった声が続々と寄せられている。中嶋さんは「こういう場所が、いつかどの町にも当たり前になれば素敵」と夢を語る。色鮮やかなベンチと、人の心の温度が交差する日向市。今日も誰かが、新しい一歩を踏み出すきっかけと出会っている。

コメント

  1. 子どもたちと一緒によくこの公園に行くのですが、虹色ベンチを見るたびに心が温かくなります。うちの子もベンチの横にいると自然と他の子や大人とおしゃべりできて、とても良い場所になっています。素敵なプロジェクト、感謝です!

  2. 最近あのカラフルなベンチ、散歩中によく眺めてます。いろんな人が集まって賑やかに話してるのを見るのがほんとに気持ちいいですね。昔と比べて公園がもっと優しい場所になった気がします。

  3. このような取り組みが日向市から広がっていることに胸が熱くなりました。世代や考え方、感じ方の違いを、こんな素敵な形で受け入れ合えるのは本当に素晴らしいですね。私も機会があればぜひベンチに座ってみたいです。

  4. 性の多様性を学ぶ授業は受けたけど、実際にこういう場所でお互いを認め合えるってなんかすごいと思いました。勇気を出して話しかけるきっかけができるのがうれしいし、自分も仲間に入りたくなります。

  5. 最近ベンチに座っていたら、おばあちゃんと学生さんが仲良くお話ししてて、なんだか心がじわっとしました。多様性って難しいイメージがあったけど、こうやって自然に人とつながれる場所があるって本当に幸せですね。