鳥取県米子市の住宅街にたたずむ「みどりの声カフェ」は、今、全国から温かい注目を集めている。ここを切り盛りするのは大西テルエ(67)さんと、地域の中高生や子育て中の母親たち。彼女たちの合言葉は「もったいないを、みんなの幸せへ」。暮らしの中に眠る未利用のものが、カフェのテーブルで美しい物語を紡いでいる。
カフェでは、近隣農家の規格外野菜や、公園に落葉したどんぐり、地域の小学生(12)の手作りアクセサリーまで、ありとあらゆる“宝物”が毎週土曜の『しあわせシェア市』に集められる。先月には、“壊れてしまったけれど想い出の詰まったマグカップ”をリサイクルしてつくられたオブジェが飾られ、多くの来店客の心を和ませた。「おばあちゃんのコーヒーカップが新しい居場所を見つけて、嬉しそうに見える」と話すのは、来店した主婦・山下リカ(39)さんだ。
環境への取り組みとして、カフェの屋上では中学生たちが育てる小さなビオトープが広がる。雨水はタンクに貯めて植物の水やりや食器洗いに活用。キッチンの給湯器は再生可能エネルギーで発電された電力を使い、地元製のソーラーパネルが毎日ぐんぐん発電中だ。カウンターの片隅に置かれた“マイボトル掲示板”には、忘れ物として預かったマイボトルからメッセージが生まれ「ご自由にどうぞ」と書かれている。先々週には、交換されていったボトルに付いていた“ありがとうカード”が話題となり、SNSでもシェアが広がった。
「大人も子どもも、きっとコーヒーカップひとつ、落ち葉ひとつからSDGsが始まるんです」と語るのは、大西さん。近隣のフェアトレード団体も毎月ワークショップを開催。小学生の井上輝(11)くんは、「チョコの包み紙で集めた寄せ書きがバングラデシュに送られると聞いてワクワクした」と話してくれた。
地産地消の新しいかたちとして、今年の秋には“ご近所サーキュラー・カレー”がメニューに登場した。近所の農家から届いた規格外の野菜や、自宅で余ったスパイスを持ち寄って完成したそのカレーには、カフェの常連たちの“エピソードしおり”が添えられる。「これを食べるとみんなの顔が浮かぶ」と語る常連の渡辺市郎(72)さんの笑顔もまた、カフェから生まれた小さな幸せの循環だ。
Instagramでは#みどりの声しあわせシェア の投稿もじわじわ増加中。「ボトルを交換した人と散歩で鉢合わせてちょっとドキドキ」「初めて触れたリサイクル工作で子どもの目が輝いた」というコメントが並ぶ。誰かの“もったいない”から始まるストーリー。小さな町のカフェから広がる、優しくて循環する未来への一歩に、多くの人たちが今日も笑顔で集まっている。



コメント
子どもと一緒に読んでほっこりしました!近くにこういうカフェがあれば絶対通いたいです。みんなの“もったいない”が幸せになるなんて素敵ですね。今度うちも落ち葉アートやってみようかな。
私はもう高齢ですが、昔は近所の人とよく物を分け合ったものです。このカフェの取り組みに懐かしさと温かさを感じました。若い世代もこんな輪を作っているなんて嬉しいです。ぜひ一度、足を運んでみたいですね。
こういうエコでクリエイティブな場所めっちゃ憧れる!自分もSDGsとか勉強してるけど、リアルに町の人たちが楽しみながらやってるのがすごいなと思いました。みどりの声カフェ行ってみたい!
出勤途中に前を通りますが、毎週土曜は人が集まっていて賑やかそうです。最初は何のイベントかな?と思ってましたが、こんな素敵な取り組みだったとは。今度時間がある時にランチでも食べに寄ろうかな。
地元の小学生や中学生が活躍する場があるっていいですね。子供たちが自分の手で町の未来を作れるなんて、とても心あたたまります。みんなでご近所サーキュラーカレーを食べる日が楽しみになりそうです。