「誰かの一日を明るくできたら」。そんな想いから生まれた一本の短尺動画が、今や世界中のSNSをハッピーな温度で満たし続けています。北陸地方の山間で暮らす自称・自撮り名人の女性、西園寺タエコさん(80)が作る“笑顔リール”は、年齢も国境も超えて広がり、多くの人の心をほっこりと包み込んでいます。
西園寺さんが短尺動画を始めたきっかけは、孫から譲り受けたスマートフォンでした。「初めはどうやって撮るかも分からなかったけど、孫が“おばあちゃんの笑顔は世界一だよ”って言ってくれてね」。タエコさんは、山の花や自家製のおはぎを背景に、つぶらな瞳でカメラにウインクするなど、毎日違った“幸せの瞬間”を撮影して投稿しています。
掲載からわずか一週間で、「#タエコ笑顔チャレンジ」のタグが各国のタイムラインに出現。日々五千件を超える『いいね』を集め、ついにはアルゴリズムの推薦リールに入り大拡散。ライバル媒体が「なぜ一人の高齢女性の自撮りがこんなにバズるのか」と取材依頼を申し込むほどです。面白半分で始めた人々も、タエコさんの素朴な笑顔動画に触れると「気がつけば自分も笑顔に」とコメント欄が優しさで溢れていきます。
さらには、動画を見た広告代理店の坂上テルオさん(42)が、タエコさんに地元特産の梅干しPR案件を持ちかけるという新展開も。「ギャラ代わりにお漬物?」と笑いながら引き受けたタエコさんは、人生初の広告出演へ。仕上がった動画にはおなじみの「今日もいい日だったね」の締め台詞が入り、閲覧者から「癒やされた」「こんなおばあちゃんになりたい」と反響が寄せられています。
それだけでなく、同じ町内の老人会メンバーたちも次々と動画制作に挑戦。「誰でもスターになれる時代」と、新たな“自撮りコツ教室”まで誕生しました。今や町の広場は、スマートフォン片手に笑顔を重ねる80代の“自撮り合戦”で賑わっています。「若い人が動画で楽しそうにしているのを見て、自分も挑戦したかった」と語る参加者の佐々木ミサオさん(83)は、人気の秘訣について「うまく撮ろうとしすぎず、心から楽しむこと」と小さく微笑みました。
IT研究者の東海林ヒロト教授は「アルゴリズムが計算できない“人の温かみ”こそ、拡散の鍵になっている。いいねの数やバズり度以上に、こうしたポジティブな連鎖が生まれるのは社会にとってかけがえのないこと」とコメント。西園寺タエコさんのささやかな笑顔のリールは、今日も世界のどこかで誰かの心にそっと火を灯し続けています。


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