沈みゆく夕陽の下、カラフルな屋台の明かりが点るたび、十ヵ国語が飛び交う笑い声が響く──。北陸地方に位置する架空の町・鳴海原(なるみはら)で、ささやかな夜市が地域の新たな名物になっている。人種も文化も異なる住民たちが、互いの言語と言葉を磨きあうこの夜市は、移民と地元の人々双方が心を通わせる温かな共生の場だ。
きっかけは、ルーマニア出身のグリエンコ・ミハイ(調理師・36)が始めた手作りポトフの屋台だった。寒さが厳しいこの町で、彼は母から受け継いだスープレシピをふるまうことにした。最初の冬こそ客は少なかったが、大柄で恥ずかしがり屋のミハイが、不器用ながら「ありがとう」「またきてね」と日本語を綴ったメッセージカードを渡す姿が地元の子どもや高齢者の間で評判に。屋台には町内の移民たちも手伝い始め、エジプト、ベトナム、シリアなど計十ヶ国出身の住人が勢ぞろいする月曜夜の“ミハイの屋台夜市”へと成長した。
この夜市の特長は、地元高齢者と移民二世たちが共に作る『多国籍ポトフ』。皆で手を動かせば自然と会話も弾み、エディン・シュリューテ(大学生・20)は「地元の“おばあちゃん”と一緒に野菜を刻みながら方言を一つずつ覚えた。彼女たちは今、私の第二の家族です」と微笑む。ポトフ一杯につき、違う国の言葉で“おいしい”を伝えるのが暗黙のルール。食後はそのまま手作り楽器の即席演奏や、家族の写真を見せ合う時間が始まる。
生活支援ボランティアの籾山さくら(会社員・45)は「言葉がわからないから、と構える暇はないのよ。一緒にジャガイモを剥けば通じ合うし、困ってれば必ず誰かが手を貸す。昔ながらの“面倒見合う”町内会が、自然に世界規模になったみたい」と語る。町の中心商店会も協力し、移民家庭向けの生活相談コーナーや託児ブースも設置された。
SNSでは「うちの町にも“多国籍夜市”がほしい」といった声や、「#鳴海原ポトフ」が数千回投稿されるなど、ささやかな輪の拡がりへの期待が高まっている。人種や言語の違いを超え、家庭の味と見守りの精神でつながる鳴海原の小さな夜市。そこには“誰もが誰かの家族になれる町”の優しい夢が、静かに息づいていた。



コメント
子どもと一緒に行ってみたくなる夜市ですね!色んな国のお料理を味わえるだけじゃなく、地元の方と自然に交流できるってとっても素敵。こういう場所が近所にあったらいいな。
昔は町内会も活気があったけれど、今はなかなか難しい。でも鳴海原のように、若い人も外国の方もみんなで輪になれるのは思ってもみなかった。人生まだまだ楽しめそうじゃ。
自分も留学生の友達が多いから、こうやって自然に交流できる場所があると最高!ミハイさん達、ホントにカッコいいです。一杯ご馳走になりたい!
いつも夜市では孫と一緒にお手伝いしてます。本当に皆さん優しくて、毎週が楽しみです。これからも町がにぎやかで、温かい場所であってほしいです。
フィクションだけど、こういう話がもっと現実になったら世の中ずっと平和になりそう。うちの町にもミハイさんみたいな人、どこかにいないかな~笑。