北関東の片田舎に位置する南那須町で、今年春、思いがけない優しさで満ちた一日が生まれた。難民認定を受けたばかりの家族と、地元小学生が協力して開いた“たんぽぽ市”は、街に新しい絆とあたたかい笑顔をもたらした。
出入国在留管理庁の特別支援プログラムにより南那須町に暮らすことになったボリス・カリディンさん一家(5人)は、町の商店街に溶け込もうと日々努力を重ねていた。しかし言葉も慣れぬ土地での生活は簡単ではない。そんな中、小学校5年生の佐藤百々葉さん(11)が「一緒にお店を出しませんか?」とカリディンさん一家に声をかけた。
最初は恥ずかしそうにしていた一家だったが、百々葉さんやクラスメートが毎日手紙を書いたり身振り手振りで言葉を覚え合ったりするうちに、自然な笑顔が町に広がっていった。そして迎えた週末。商店街の真ん中に、国際色豊かなたんぽぽ市が開かれた。カリディンさんの奥さん、マリアさんお手製の民族お菓子、子どもたち手作りのおもちゃや折り紙、地元農家さんからの旬野菜が並ぶ屋台がずらり。
SNSには、「文化は違っても一緒に笑い合えるってすごい!」「まだ会ったことのない隣人が、本当はすぐそばにいることに気づいた」「小学生の力が新しい町の風を運んでくれる」といった声が相次いだ。当日参加した地域のパン職人・原田乃映さん(43)は、「カリディンさん一家の微笑みが、昔からいたような安心感を与えてくれました。国も言葉も違っても、パンもお菓子も、みんなで分け合えば美味しいですよね」と語る。
町の自治会会長、津田龍哉さん(65)は「子どもたちの好奇心と優しさが起点になり、大人たちも“自分にできること”を考えるようになりました。力を合わせれば、どんな困難も光に変わる。世代や背景を超えて、一緒に未来をつくる、それが町の誇りです」と誇らしげに語る。
この春、南那須町はちょっとだけ豊かになった。広場に咲いたたんぽぽの花のように、あたらしい“隣人”の笑顔が町の未来を優しく照らしている。労働力不足という課題への具体的な一歩は、小さな勇気と笑顔から始まったのだ。


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