サウナの森で鳥が歌う——“蒸気のうた祭り”が村に春を招く

薪サウナ小屋の窓辺で、春の森林と鳥、湯気とともにくつろぐ人々の様子。 サウナ・温活ブーム
村の森で、人と鳥が春の始まりを共に感じる蒸気のうた祭りの風景。

まだ雪が溶けきらぬ北信州の小さな山村・緑尾(りょくび)村の薪サウナ小屋に、今年もやさしい春の息吹が舞い込んだ。ふだんは静かな森が、サウナを愛する人々と小鳥の歌声で包まれる「蒸気のうた祭り」。今年で三回目となるこの催しは、村の年配者から若い家族、遠方からの“サウナ旅”客まで、みんなを笑顔にした。

村の奥、川沿いに佇む手作りの薪サウナ「蒸樹舎」。ここを管理する田井戸ゆきと(たいいど ゆきと・54)は、3年前、疲れ切った移住者の一言からヒントを得たという。「鳥の声と一緒にロウリュできたら、きっと心も身体もほどける」と誰かがぽつり。そこで地元の野鳥観察家・浜畑あすか(はまばた あすか・28)の協力も得て、春先の午前、森に小さなサウナを建て“鳥と一緒にととのうイベント”を開いたのが始まりだった。

当日はまだ朝靄が残る中、村人や旅人が次々と薪サウナへ。セルフロウリュで蒸気を立ち昇らせると、湧き立つ白い湯気とともに、周囲のエナガやコマドリたちが森にふわりと現れる。サウナの窓からは、緑に映える彼らの歌や羽ばたきがすぐそこに。「水風呂代わりの小川に入ると、鳥がすぐ横を舞う。あまりの心地よさに、ふだん話さない人とも自然に語り合えるんです」と語るのは、参加二年目の佐久間ゆりか(会社員・33)。“交互浴”の合間、見知らぬ人同士が「今日はどんな鳥を見ましたか?」と微笑み合う、そんな光景が至る所で広がった。

村人たちは、この祭りを“デトックスの日”と呼ぶ。自宅でもセルフロウリュを楽しむ人が増え、老人会のメンバーは「歳を取っても、蒸気さえあれば春はいくらでも体に巡って来るみたい」と笑う。今年は子供たちのために、ロウリュの合間のお話会や、鳥型の石鹸作り教室も催された。サウナ後の小川辺では、一緒に汗や心の重さまで流したと語る人も少なくない。

SNS上には「#蒸気のうた祭り」「#サウナ旅」のタグと共に、森の鳥との記念写真や、村全体が一体となって歌う動画が次々と投稿された。温活を通じて地域がほぐれ、人も鳥も春の訪れを祝い合う——そんな“ありそうでなかった物語”が、今年も緑尾村に静かに息づいた。専門家で温活研究者の河津梢(かわづ こずえ)は「人間と自然が一緒にととのうサウナ文化が、これからの地域づくりのヒント」と語る。次の春も、蒸気と歌と笑顔がこの森にめぐってくるだろう。

コメント

  1. 鳥型の石鹸作り教室、とっても素敵です!うちの子も自然の中で体験できるイベントにいつか参加させてあげたいなぁ。知らない人とも笑顔でおしゃべりできる、こういう温かいお祭りこそ残してほしいです。

  2. この歳になってもサウナと春の森で身体が軽くなるなんて思いもよらなかったです。昔の遊び場の森がいまは皆さんの癒しの場所になっていて、なんだか誇らしい気持ちです。

  3. めちゃくちゃ癒やされそうなイベントですね!鳥の声を聴きながらロウリュ…生きてるだけで得した気分になりそう。来年はサ友と絶対行きたい!