北の海沿いに位置する緑岳町では、今年の夏、不思議な音色の広がる日常が住民たちを包み込んでいる。町を歩けば、住宅の軒先や公園の木々から、澄んだ音がふんわりと流れてくる。その源は、町内の小学4年生・羽田来斗くん(10)が発案した「カーボンチャイム」だ。
カーボンチャイムは、CO2を吸着する新素材で作られた風鈴型のオブジェ。来斗くんが理科の自由研究として始めたこの発明は、町内の発明サークルと再生エネルギー推進協会の協力で一気に広まり、今では3000個近くが設置されている。「風が吹くたびに、地球が少しずつきれいになったら嬉しいなって思ったんです」と、来斗くんは恥ずかしそうに語った。
このチャイムは、風を受けて揺れるたびに内部の特殊バイオコーティングが空気中の二酸化炭素を吸着し、夜には自動で再生されるという。発明サークルの代表である森尾美智子さん(43)は「子供たちのアイディアが町を動かし、大人も手作りで参加するうちに、“一緒に未来を守ろう”という気持ちがどこかで響き合っていった」と微笑む。カーボンフットプリントを記録する仕組みも付帯され、スマートグリッド連携で町全体の削減量が可視化されると、住民の関心もいっそう高まった。
さらに、町内のグリーン水素発電所や洋上風力と連動した“音のアグリゲーション”イベントも開催され、収集されたチャイムの音色が夜空に響き渡る。音楽教諭の久遠秀俊さん(35)は「町中の微細なチャイムの調べが重なり、まるで森の中にいるような気分です。一人ひとりの小さな工夫が合わさることで、カーボンニュートラルに向かう力強い和音が生まれています」と語る。
SNSには『通学路が音楽の道に』『この音を孫にも聴かせたい』といった投稿があふれ、大手エネルギー企業からもオフサイトPPAの問い合わせが相次ぐなど、町独特の“脱炭素の音文化”に全国から注目が集まっている。来斗くんの発明は、GX時代の新しい希望を、予想もしなかったやさしい形で社会に贈っているようだ。
コメント
うちの子も来斗くんと同じ小学4年生です。子どもたちの自由な発想が大きなムーブメントにつながるなんて本当に素敵!朝の通学路でカーボンチャイムの音が聴こえたら、私も一緒に地球を守ってる気持ちになれそうです。
正直、カーボンニュートラルって難しそうだし遠い話だと思ってました。でもこんな形で、音で町全体が繋がるってめっちゃ良いですね。自分も地元で何か始めてみたくなりました!
なんとまあ、やさしい発明をする子がいるものですねぇ。昔はよく風鈴の音で夏を感じましたが、今は環境にもやさしい音色になっているのですね。孫とお散歩しながら一緒に聴きに行きたいです。
おお、うちの近くの公園でもチャイムがたくさん吊るされてて、夜になると光ってきれいなんですよ。小学生の来斗くんから始まったって知って、なんか応援したくなりました!こんな町に住んでてよかったです!
教員1年目です。子どもたちと“音”を通じて未来の話ができるってすごいなと感じました。チャイムの音1つ1つにみんなの願いが込められてそう。自分も音楽の授業で取り上げてみたいと思います。