全国的に有名な温泉郷、秋田県の陽乃町で、名物カフェ「ホットストーン・コーヒー」が静かなエネルギー革命を起こしている。“地熱発電”を活用した温かな空間と小さな優しさが、訪れる人だけでなく町全体へ温もりを届け始めている。
「うちのカフェの一番の自慢は、コーヒーを淹れるそのお湯も、暖炉のぬくもりも、足元の床暖房も、全部この町の地熱なんです」。店主の高峰尚彦（たかみねなおひこ）さん（46）は、ほがらかにそう語る。店の裏手には源泉を利用した小さな地熱発電装置が設置され、店の電力のほとんどを賄っているという。「初めは自分の店のために小さい規模で始めたけれど、余った分を少しずつご近所さんにも分けられるようになって」。町内会で余剰電力をシェアする取り決めが始まってから、陽乃町全体の光熱費が自然と減ったそうだ。
ユニークなのは、エネルギー効率を追求した工夫の数々だ。常連客の主婦・渡部香子さん（39）は「夏でも冬でもお店がほど良くあったかいから、来るだけで癒されちゃう」と顔をほころばせる。カフェの壁やテーブルは地熱管を巡らせて設計されていて、ぬくもりが直に伝わる。ハート型の“温泉たまごパン”や、噴気でふっくら蒸しあげるプリンも評判だ。「コーヒー豆のかすもお風呂の燃料にリサイクルしている」とスタッフの中沢遼（23）は胸を張る。エネルギー効率99％近いお店にと、若い店員たちも張り切っている。
カフェに飾られた色とりどりの手紙は、町の子どもたちからの“ありがとう”のメッセージだ。この春、カフェの地熱発電から生まれた電気を使い、陽乃小学校の体育館も暖房のいらない空間になった。「みんなで温泉パワーのことを調べて、感謝の気持ちを絵にしたんです」と語るのは、児童の佐藤みなも（10）。店内では子どもたちの描いた「地熱くん」「エコエネルギーちゃん」など、かわいらしいキャラクターも展示されている。来店したお客さんがそのチャリティカードを手に取れば、収益の一部は町の森林保全にも回される仕組みができている。
さらに今年の春からは、新しいCCUS（炭素回収・利用・貯留）機能を兼ね備えた“苔の壁”が店内に登場した。設計に関わった技術者・梶原誠治（51）は、「地熱発電で生じたごくわずかなCO2も、苔の壁がしっかりつかまえて店内の空気を浄化します。お客さんと一緒に、緑の成長を楽しめるんですよ」と話す。SNSでは「ホットストーン・コーヒーに行くと、心も体もポカポカ」「地球の未来も明るい気がする」と感動の声が次々と投稿されている。
今では陽乃町の地熱エネルギーモデルは、ほかの温泉地からも見学者が訪れるほど話題だ。高峰さんは「おいしいコーヒーが町の元気の源になれれば」と微笑む。カフェに集う人々の小さな輪が、持続可能でやさしい経済を支えている。今日はここにも静かな“火の贈り物”が、やさしく灯る。
コメント
子どもと一緒に先日おじゃましました。店内がほんわか暖かくて、地熱のぬくもりがそのまま伝わってくる感じ、本当に素敵でした！学校も温かくなったと喜んでいましたし、こういう地域が増えたらいいなぁと思います。
高齢になってから光熱費が心配でしたが、町のみんなで地熱を分け合うなんて、昔の助け合いの精神を思い出します。カフェの若い人たちが頑張っている姿も元気をもらえますね。
地熱発電とカフェがこうやって繋がるなんて正直びっくり！しかもエコな取り組みもいろいろあって、勉強になりました。機会があればゼミの友達と見学に行ってみたいです。
ご近所なのでよく通っていますが、スタッフさんもみんな親切で、パンもプリンも本当に美味しい！毎回カフェのあたたかさに癒されています。子どもたちの描いたキャラクターグッズ、集めたくなっちゃいます。
こういう取り組みがニュースになるの、めっちゃ嬉しいです！町ぐるみの温もりとか、カフェのイノベーションとか、まさに“幸せなニュース”って感じで気分が明るくなりました。