空から届く故郷の味――Uターン青年がつなぐ“雲のカフェ便”

青空の下、雲の形をしたドローンが小さな町の公園でお年寄りや子どもたちにパンやスープを配達している様子。 地域共創
ふわりこが町の人々に温かな食べものと笑顔を届けます。

青空の下、小さな町にふわりと現れる雲。その雲が、ある日からみんなに温かいスープや焼きたてのパンを届けるようになりました。しかも、雲の主は町を離れていた青年。その背景には、地域と人をやさしく結ぶ、前代未聞の地域共創プロジェクトが隠されていました。

徳島県の平野町で育った大槻咲良(28)は、大学進学を機に東京へ。都会での生活に夢中になるうち、いつしか故郷とは疎遠になっていました。ところが去年の初夏、咲良は偶然、町の高齢者が「もっと新しい刺激と交流がほしい」と語るSNS投稿を目にします。彼女の胸に、かすかな郷愁と共に「ふるさとを元気にしたい」という想いが湧きあがりました。

咲良はすぐにUターンを決意します。東京で培ったITスキルを活かし、地元NPO「そらいろ手和」と協働。悩みの種だった移動販売や孤立感を解決できる仕組みを考えました。こうして生まれたのが“雲のカフェ便”――町の空をゆっくり流れるやわらかい雲が、町民からのリクエストをもとにスープやパン、お菓子などを届けてくれる夢の配達サービスです。町で開かれた説明会では、「雲には心があるんですね」と涙を浮かべるお年寄りもいたそうです。

雲のカフェ便を支えているのは、自動雲型気流ドローン『ふわりこ』。咲良たちは町内のパン工房や農家とパートナーシップを組み、地域の食材や伝統レシピを積極的に取り入れています。高齢者も子どもも、スマートフォンが苦手な人には、役所や商店の窓口からも直接注文できる新しい“やさしさの流通システム”が完成。配達時はカフェ雲がふんわり町に舞い降り、スタッフがふれあいトークでほっとするひとときを添えます。「届くのはごはんだけじゃなくて、笑顔や想い出が蘇る気持ちなの」と利用者の松下幾三(76)は話します。

この雲プロジェクトをきっかけに、町には新たな連携も生まれています。秋には全世代が集う“雲下フェス”が開催決定。各世代が自慢の一品を持ち寄り、カフェ雲に乗って町外の友人知人ともバーチャル交流ができるそうです。「離れても心はつながるって、こういうことなんだと実感しています」と咲良は微笑みます。SNSには「#ふるさと雲便」や「#ふわりこありがとう」の声があふれ、いま町の空は、たくさんの笑顔でいっぱいです。

コメント

  1. とても素敵な取り組みですね!子どもも「雲がパンを運ぶの?」と目を輝かせていました。忙しい毎日の中でも、ほっとできる時間を届けてくれるって、親としてもありがたいです。

  2. 私は高齢者のひとりとして、とても心あたたまる話だと思います。昔は近所づきあいが多かったけれど、最近はさみしいことも…雲のカフェ便が、町にまた賑わいを運んでくれるといいですね。

  3. え、カフェ雲とかマジでうらやましい!俺の住んでるとこにも来てくれたら毎日パン頼みたいw 地元が元気になるっていいっすね!

  4. 東京から帰ってきて町のために頑張る若い人がいるって、本当にうれしいです。うちの野菜もカフェ雲に載せてもらえる日がきたら、もっとがんばれそう!

  5. 読んでいて心が温かくなりました。こういう交流が広がれば、遠くに住んでいてもふるさとの人たちとつながれる気がします。咲良さんたちの勇気に感謝です。