小学生がつなぐ“笑顔のリードタイム”──工場と地域を結ぶ奇跡のBOPIS大作戦

自転車で鉢植えを運ぶ小学生たちが春の町並みを明るく走る様子。 サプライチェーン管理
小学生たちによる植物の配達が、地域に笑顔と活気をもたらしている。

「リードタイムは心で短縮できる」──そんな言葉が、今や山梨県北西部の緑坂町で噂になっている。地域の小学生たちと地元の工場が協力し、小さな“奇跡”のサプライチェーンが生まれたのだ。全国的に物流の遅延や在庫の過不足が懸念される中、この町のBOPIS(オンライン注文→現地受取り)サービスは、人と人のつながりのなかでほっこりと花開いている。

昨年末、緑坂町のスマイル植物工房は、リードタイム短縮に頭を悩ませていた。工房の八峰律子(やつみね・りつこ)代表は「植物苗は新鮮さが命。でも、遠方からの注文品が町の小売店まで届くまでに数日かかることもあり、みんなをがっかりさせてしまっていました」と振り返る。そんな時、近くの緑坂第二小学校の4年生、畠山樹(はたけやま・いつき)さんが、友達数人と工房に手紙を届けた。「植物のこと、街のこと、もっと好きになりたい。おてつだいしたいです!」——この素朴な申し出が、やがて町全体の物流に温かな風を吹き込む種となった。

今年春、スマイル植物工房と小学校は合同で“地域BOPIS応援隊”を結成。毎日放課後、小学生たちが工房から苗や鉢花などの受注品を自転車やリヤカーで町の店舗や高齢者宅へお届けするサービスを始めた。各家庭やお店の前には、児童の手書きメッセージが添えられ、受取人は笑顔いっぱい。リードタイムは平均で半分以下に短縮されただけでなく、「子どもたちと話せて元気をもらえる」と、受け取る側の心も明るくなっている。

このBOPIS大作戦は、思わぬところに広がりを見せている。町の文房具店では、店主の柳原司(やなぎはら・つかさ)さんが「どうせなら、と他の商品も小学生が一緒に運ぶお手伝いをしてくれて、地域みんなの“共通配送便”ができた」と語る。SNS上では“#緑坂BOPIS”のハッシュタグが誕生し、「子どもたちが地域を走る姿に涙が出た」「配達のついでに困っているお年寄りの荷物も運ぶサービスが始まったらしい」など感動の声が広がっている。

専門家もこの取り組みを高く評価している。サプライチェーン管理に詳しい桜庭真一郎教授(静岡大学)は、「BOPISは単なる効率化以上の価値をもたらす可能性がある。小学生が架け橋になり、地域の人々が協力することで新しい幸せの流通モデルが実現した」と語る。八峰代表は、にこやかにこう締めくくった。「植物を運ぶ手には、小さな勇気と優しい気持ちが詰まっています。この街のリードタイムは、みんなの心の速さだと思うんです」。今日も緑坂の路地には、自転車のベルと笑い声が響いている。

コメント

  1. うちの子ももしこんなお手伝いに参加できたら、きっと自信が付きそう。植物や人とのつながりを大切にする地域、素敵ですね!心が温まりました。

  2. 最近は人との交流が減って寂しく感じていましたが、こうやって子どもたちが直接荷物を届けてくれるのは本当にうれしいです。受け取る時の手書きメッセージ、とても楽しみです。

  3. 物流の効率化とかBOPISとか、むずかしく聞こえがちだけど、子どもたちが主人公になることで一気に親しみやすくなりますね!自分の地元でも似た取り組みができたらいいなって思いました。

  4. 毎日夕方に子どもたちがにぎやかに自転車で通るのを見かけてましたが、こんな素敵な活動をしてたんですね。見ているだけでこちらも元気をもらえます。

  5. 昔はおつかいやご近所のお手伝いが当たり前だったけれど、今は少なくなりましたよね。こういう温かな関係がもう一度戻ってきたみたいで、とても嬉しくなりました。