朝の“スマイルバスケット”が町に届く日――おすそ分け便がつなぐ小さな幸せ

色とりどりの野菜やパン、メッセージカードの入ったかごが朝の日差しの中、ベランダに置かれている様子。 暮らし・生活
朝、ベランダに届いた“スマイルバスケット”のおすそ分けが、町にやさしさを運びます。

北風が少し身にしみる朝、ベランダに出た主婦の古賀千晶(37)は、思わず目を丸くしました。そこには見慣れないかご――中には、色とりどりの野菜や焼き立てパン、そして手書きの小さなメッセージカードが。「今日も素敵な一日になりますように」。ホッと温まる贈り物でしたが、これは最近、町で話題になっている“スマイルバスケット便”のものでした。

“スマイルバスケット便”は、南洲町内の有志住民20人による、無償のおすそ分け宅配チームです。それぞれが朝に用意した野菜や、家庭菜園で育てた果物、前夜多めに作ったおかず、捨てる前のリユース小物などを、早朝そっと町中の玄関先やベランダに置いていきます。活動のきっかけは、高齢の神田正蔵さん(73)の「独り暮らしでも、誰かの気配がわかると、毎日がうれしい」とこぼした何気ない会話。それを聞いていた町内の自営業者・白洲真紀さん(45)が“みんなの朝を少しだけ明るくしよう”とSNSで呼びかけたのが始まりでした。

発送される品々は日によって驚くほど多様。家庭菜園のミニトマト、編みぐるみ、余ったティーパック、手作りごみ袋、格言が書かれたカードなど、まるで宝探しのよう。“要らなくなったから誰かにバトン”の精神が、節約やゼロウェイストの価値を自然と広げています。共働きの藤堂陽介さん(28)は「忙しいとき、バスケットに入っていた冷凍おにぎりに助けられた」と振り返ります。「知らない誰かの温もりが、面倒な家事や通勤前の気持ちを不思議とラクにしてくれる」。

町には昨秋から“バスケット日記”と名付けたノートも設置されました。住民たちが「今朝は大根の煮物ありがとう」「また来週がんばろうね」など、感謝や喜びの言葉を自由に書き込めるようになっており、先日はなんと町のスマート家電メーカー“オリエンテック”から、自動で保温でき“ありがとう”メッセージを再生する配達用小型ロボが無償貸与され、さらに活動が広まりつつあります。

最近は町外から活動を学びに来る人も増加中。「家族や会社で余ったものや、ひと手間かけたおすそ分けが、町全体の家事をみんなで支え合う習慣になれば」と白洲さんは語ります。専門家の五味ユカリ氏(コミュニティ研究家)は「人は誰かをちょっと思うだけで、自分も温かくなる。バスケット便は新時代のご近所力」とその波及効果に驚きを隠しません。「小さな優しさは、不思議といっぱい集まるもの。そんな町の朝が、日本中に広がったら……いい日が増えると思いませんか?」

コメント

  1. 子どもがいるので、こういうおすそ分け文化、とってもありがたいし素敵だなと思います。見知らぬ誰かのあったかい気持ちが朝から届いたら、親子でほっこりした朝になりそうです。私もいつか何かをお返ししたい!

  2. わしも一人暮らしなんじゃが、こんなやさしさが町に広がっていくのは本当にうれしいことじゃ。昔はこういう助け合いが当たり前じゃった。またそんな時代が戻ってくるかと思うと、胸が熱くなる。

  3. なんかリアルどうぶつの森みたいで楽しそう!実家を出て初めて、一人だと朝ってさみしいなと感じるけど、こういうサプライズがあったら一日頑張れそう。うちの町にも来てほしい!

  4. こういう活動、ほんとにやろうと思ったら大変だと思うけど、始めた方々の行動力に感動です。通勤前にちょっと心が和むだけで、一日の疲れもちょっと軽くなる気がしますね。

  5. こういうの、都会にも広まると良いですよね。ギスギスしたニュースが多い中で、この記事読んですごく優しい気持ちになりました。自分も家の中で余ってるもの、人の役に立てるかなと考えさせられました。