虹色レンガの「ゆめカフェ」開店 世界40言語で語り合うふしぎな午後

虹色のレンガ床が敷かれたカフェで、多国籍の客たちが笑顔で過ごす様子を撮影した写真。 多様性と共生
ゆめカフェ・レインボーブリックの店内には、さまざまな言語が飛び交い、温かな交流が広がっている。

色とりどりの煉瓦が道に敷き詰められ、まるで子どもの夢を現実にしたような小さなカフェが誕生した。開店初日、不思議な看板——「世界のことばで話そう!」——に導かれた客たちは、心温まる体験を持ち帰ることになった。

このカフェの名は「ゆめカフェ・レインボーブリック」。経営するのは、神奈川県在住のシェフ兼言語学習家、北村アイリ(36)。15年前、北村が海外留学で出会った友人たちと突然再会した日をきっかけに、「ことばの壁がない場所を作りたい」との想いから企画した。店内には世界40か国の言語で書かれたメニューがずらり。各テーブルには、言語ごとに色分けされたポストカードと音声翻訳が内蔵された“ことばレンガ”が置かれている。レンガを手に取ると、その言葉で「こんにちは」や「ありがとう」が流れる仕組みだ。

開店初日、近隣に住む中学生の山下レナさん(13)は、移住してきたばかりのインドネシア出身の母親と来店。「私、英語しかわからないのに大丈夫かな?と思ったけど、隣の席の人と『ありがとう』を交換できて嬉しかった。一緒に笑える瞬間があった」とやさしく微笑んだ。北村は「言葉の失敗も、みんながクスッと笑いあえるエネルギーに変わる場所を作りたかった」と語る。

この日、カフェを訪れたのは地元の子どもたち、多国籍のビジネスマン、高齢のご夫婦、さらには言葉をほとんど話せないAIロボットの「パール号」まで。店内の壁にはゲストが各自の母語で記入した「お気に入りの言葉」が貼り出され、その数は初日で300語を突破した。SNSには『今日からタイ語で「ごちそうさま」を覚えた!』『知らない言葉を笑いながら交換できるなんて最高』と投稿が相次いだ。

専門家のユン・ジョンウ国際福祉大学教授(多文化共生論)は「言語は人を隔てる壁にもなり得ますが、遊びや創造力を使えば架け橋に変えられます。このカフェの工夫は地域社会の多様性とインクルージョンを日常に溶け込ませる素敵な実証実験」と評価する。今後は、難民家庭の雇用体験や地域の小学校と連携した料理教室、子ども向けの多言語絵本読み聞かせも企画されているという。

帰り道、煉瓦を踏みしめる客たちが足元を見下ろすと、それぞれの国の言葉で“また会いましょう”と光る文字。ゆめカフェ・レインボーブリック——この場所で生まれる笑顔と言葉の花は、これからも色鮮やかに咲き続けていくだろう。

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