晴れ渡る空の下、壮大な山々を背景に行われた大型野外音楽フェス「Hilltop Sounds」で、思いがけない優しさの連鎖が人々の心を温かく包み込みました。ステージ前で始まった“サークルピット”が、いつしか参加者たちの思いやりを繋ぐ輪となって、観客・演者・スタッフまでもが巻き込まれる感動的な出来事が起きたのです。
きっかけは、午後3時のメインアクトで会場を沸かせていたバンド「グラス・ハーモニクス」の演奏中でした。熱気あふれるサウンドにステージ前方で自然発生したサークルピット。しかし、その中心にふらりと現れたのは、車椅子に乗った佐古悠輔さん(22)。彼の姿に気付いた周囲の若者たちは、互いに目を見合わせ、すぐさま優しくスペースを作ると、ピットの中央に“安全地帯”を即席で設けました。
佐古さんが小さく手を挙げると、会場の誰もが拍手で応え、“佐古さんのためのサークルピット”は、力みなぎる音楽と共に自然と心優しいムーブメントへ変わっていきました。やがて、ピットの中に“一緒に回ろう!”と声をかける人、花飾りを佐古さんの車椅子につけてあげる人、さらには知らない観客同士で手を取り合って踊る人たちまで現れ、会場の雰囲気は一体感に包まれました。
この様子を目の当たりにした「グラス・ハーモニクス」のボーカル、鳴海紫音(29)は、急遽セットリストを変更し、思い出のあるバラード『君の真ん中』を演奏。静まり返った一曲に乗せて、観客それぞれが自分にできる優しさをささやかに伝え合う時間が、ゆっくりと流れていきました。運営スタッフの藤見聡(41)は、「音響ブースにも手話で歌詞を教えてくれる子や、ベンチで休む年配の方にドリンクを差し入れる若者がいた」と振り返り、会場全体が温かな心で繋がったと語ります。
SNSでは、「あのサークルピット、人生で見た中で一番優しい光景だった」「知らない人たちと自然に手を取れる奇跡。こういう野外フェスがずっと続いてほしい」など、感動の声が全国から寄せられました。佐古悠輔さんは「最高の思い出になりました。みんなにありがとうと伝えたい」と笑顔で握手を求め、多くのフェス仲間と交流を深めました。時折自然が奏でる風の音も、音楽と人の輪にそっと溶け込む。今年の「Hilltop Sounds」は、音楽と優しさが響きあう一日となりました。


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