消えかけた村を照らす「テントの灯」──ひと晩だけのアウトドア村誕生

雪がうっすら積もった旧校舎前の広場に、暖かな灯りがともるテントが並び、星空の下で人々が焚き火を囲む夜の光景。 アウトドアレクリエーション
廃校の校庭にキャンパーたちのテントが並び、ひと晩だけ賑わった水ヶ原村のアウトドア村。

冬枯れの山間の村に、満天の星とともにあかりがともった。全国から集ったキャンパーたちが廃校を舞台に、ひと晩限りの「光のテント村」を作り上げたのだ。それは、人も動物も自然も、みんなが温まるやさしい灯りだった。

長野県北部の高原に位置する水ヶ原村は、今では人口わずか24人、高齢化が進み、廃校となった小学校も草に埋もれ気味だった。だが一週間前、アウトドア愛好家の小沼広斗(36)がSNSに一枚の写真を載せた。『廃校の前の広場に、テントをずらっと並べて、冬の星空をみんなで眺めたい』。それがきっかけとなり、想いが想いを呼び、瞬く間に賛同の声が集まったのだ。

イベント当日、全国からキャンピングカーやサウナテント、自作の薪ストーブまで様々なキャンプギアを積んだ人々が集まった。集まったのは158組、500名を超えるキャンパー。その傍らには村の子どもたちやお年寄り、猟師犬たちも混ざって、みんなが焚火を囲んだ。普段は静まり返った校庭に、虹色のテントがずらりと並び、それぞれのテントには家族、友人、初めて会った者たちの笑顔が灯った。

この小さな奇跡は、自然へのリスペクトにも満ちていた。参加者の有志が廃材や流木を薪にし、静かな日中には地元の登山道を清掃し、終了後には落ち葉ひとつ残さず片づけ。夜には近くの林で野うさぎがぬくもりを分けてもらいに現れるハプニングも。SNSでは『人と自然がこんなふうに手を組める場があったなんて!』と驚きの声が相次いだ。

翌朝、朝焼けが染める静かな余韻のなか、参加者と村民はお互いに手紙を交換しあった。『また来ます』『今度は僕友達も連れてくる』『この村をもっと好きになりました』。小さな山村が時を超えて蘇った夜。水ヶ原村の一人、老農家の角田秀子(81)は語る。『こんなに村が笑ってる夜を、私は何十年も見なかった。灯りは消えても、このぬくもりはずっと消えないと思います』。キャンプは終わっても、心のテントはきっと、誰もの胸に、灯り続けるのだ。

コメント

  1. 読んでいて胸が温かくなりました。小学生の娘にもこういう体験をさせてあげたいな。村の皆さんとキャンパーさんが一緒になって笑い合える場所、とっても素敵ですね。次回は親子で参加してみたいです!

  2. 自分もアウトドア好きなので、次はぜひ参加したいです!廃校がこうやって新しい出会いの場になるなんて、発想が最高。ここから地方再生のヒントが生まれるかもしれませんね。

  3. 若い方や遠くから来てくださった方々に村がこうして明るくなったというのを読み、涙が出ました。昔の村祭りを思い出します。あたたかい光景、ほんとに嬉しい限りです。

  4. ちょうど近所に住んでいます。地元の山や校庭がこんなに賑やかになったのは初めてで、帰り道がなんだかワクワクしました!みんなの地元愛とマナーが伝わってきて、また開催してほしいと思いました。

  5. SNSでこのイベント見て気になってました!うさぎまで出てくるなんて、まるで絵本みたい。みんなが協力して山をきれいにしてるのもすごいし、私もこういう活動参加してみたいです。