長年、外来種や地球温暖化の影響で生物多様性の危機が叫ばれてきた信州の八ヶ岳山麓。今年の春、10年以上見かけることがなかった虹色ノドハッカという幻の鳥が3羽、清らかな沢沿いで発見される出来事があった。
この奇跡を後押ししたのは、地元の小学生環境クラブ「はるかぜ探検隊」と町の人々の小さな努力の積み重ねだった。代表を務める小学6年生の菱川みのりさん(12)は「毎日、自分たちの植えた木や、残した倒木を大切に見守ってきました。鳥たちが戻ってきて、とても嬉しいです」と笑顔で語った。
きっかけは3年前。地元の山林に猛繁殖した外来の草本が在来植物を圧迫し、エサを失った野鳥の姿が見られなくなった。そこで、町内の農家・黒岩一真さん(51)は「昔この森ではカラフルな鳥の姿が当たり前だった」と環境クラブに語りかけ、児童たちと一緒に在来種の苗木を植え、外来植物を手作業で駆除する『葉っぱリレー大作戦』を開始。一人ひとりが軍手をはめて賑やかに作業する姿が町内外に広がり、次第に大人たちの参加も増えていった。
そんな“森の手入れ”活動を見守る専門家、信州大学生態学研究所の岡崎文彦准教授(42)は「遺伝的多様性を意識した多種の苗木を一緒に植えたことが奏功しています。小さな生息地でも、こうした地域のつながりが生物多様性の回復に大きな役割を果たします」と評価。その言葉通り、今春は虹色ノドハッカだけでなく、クロミミウグイスや太陽色カワラヒワなど、計10種以上の野鳥が町の自然観察会で初確認されている。
SNS上では、虹色ノドハッカの希少な姿をイラストや撮影した写真と共に「八ヶ岳の森に、また魔法がかかったみたい!」「子どもたちの夢と努力に感動した」といったコメントが相次いだ。町のベーカリーでは、鳥をモチーフにした『彩りパン』まで登場し、訪れる親子連れの笑顔が絶えない。
今後も「はるかぜ探検隊」は大人たちと協力し、森の多様な植物や昆虫にも注目した保全活動を拡大していく予定だ。小さな手とやさしい思いが紡ぐ物語は、八ヶ岳の豊かな森に新しい“いのちの春”を静かに呼び込んでいる。
コメント
子どもたちが頑張って活動しているって聞いて、本当に心が温かくなりました。うちの子もこんな素敵な体験ができたらいいなあ。虹色ノドハッカ、家族みんなで見に行きたいです!
若い人たちが町の自然を守ってくれて、昔の八ヶ岳がまた戻ってきたようで感激じゃ。わしが子どものころ見たカラフルな鳥たちとまた会える日が来るとは思わんかった。ありがとうな、探検隊のみんな。
え〜めっちゃ素敵な取り組み!生態系とか授業で学んでたけど、実際に地域の人が力を合わせると本当に自然が変わるんですね。自分の住んでる街でもこういう活動があったらいいのに。
毎朝の散歩で、最近見たことのない鳥のさえずりが聞こえるようになって不思議に思っていました。こんなにたくさんの人が関わっていたとは驚きです。これからも森に笑顔が増えるといいですね。
正直、外来種の草とかそんなに問題なのか半信半疑だったんです。でも、子どもたちと大人が手を取り合って森を元気にしたこの結果を見て、ちょっと見方が変わりました。八ヶ岳の森に遊びに行くのが楽しみです!