森が紡いだ生きものの奇跡、新種フェスティバルに沸く青森県

八甲田山麓の森の中で、住民や子どもたちが木漏れ日の差す中、小さな光る昆虫を透明な容器ごしに囲んで見つめている様子。 生物多様性
森の新種フェスティバルで「ホシノタマトビムシ」を見つめる八甲田山麓の人々。

生物多様性の大切さが注目されるなか、青森県の八甲田山麓で地域住民と自然が織りなす心温まる出来事が話題となっている。森の再生プロジェクトから誕生した新種生物たちにちなんだ「森の新種フェスティバル」が開催され、自然と人々の絆が改めて感じられるひとときになっている。

八甲田山麓の広大な森林では、地元の小学校教師・樋口柊乃(ひぐち しゅうの、37)さんを中心にした『みずいろの森再生会』が5年前から遺伝的多様性を重視した植樹活動を進めてきた。この取り組みでは、在来種のブナやミズナラだけでなく、慎重な調査の上で他地域から分けてもらった希少種や、微生物にも着目した土壌管理が進められている。環境学者の槙原智仁(まきはら ともひと)さんによれば、「土壌微生物の多様性が豊かなほど、木々の成長や動植物の新陳代謝も活発になり結果的に新たな生態系が生まれる」という。実際、数年前からかつて見たこともない昆虫や、藍色の羽根をもつ小鳥、さらには光る苔などが発見され、地元の子どもたちを驚かせ続けている。

お祭りの目玉は、今年春に正式に学会で新種認定された『ホシノタマトビムシ』のお披露目だ。この体長3mmほどの小さな昆虫は、星空のような銀色の斑点を背負い、夜にはかすかに光るのが特徴。発見した地元中学生の永井瞬(ながい しゅん、15)さんは「理科の先生と一緒に森を観察していたら、不思議な光が葉っぱの下に見えたんです。こんなちっちゃい生き物が、森の物語をつないでいるんだと思うとワクワクしました」と満面の笑みを見せた。

このほか、森の中で偶然見つかった淡紫色のコケ『ルリノミソハギゴケ』を使った押し花アートの体験コーナーや、外来種対策に工夫を凝らした『持続可能な開発クイズラリー』など、大人も子どもも生物圏の大切さを体で感じられる催しが盛りだくさん。SNS上でも「#八甲田森の奇跡」などのハッシュタグが拡散され、「こんな生きものとの出会いが、日常にも奇跡があるって気づかせてくれる」「森と人との思いやりが生む温かさに感動」といった声が多数投稿されている。

地域の絆を感じさせるのは、お年寄りの知恵と若い力が手を取り合う場面だ。もともと森林破壊や気候変動の影響で一部の動植物が減少傾向にあったが、住民同士が互いの知識や経験を持ち寄り、森林保全ボードゲームや野生動物観察会を開催するなど交流の輪が広がっている。樋口さんは「森には小さな命から大きな未来へのヒントが詰まっている。この土地だからこそ生まれる生きもの一つ一つが、みんなの宝物です」と話す。

自然と共に歩む人々の温かな思いや絆が、森の奇跡を育てている。新しい命と笑顔あふれる祭りは、地域だけでなく、多様な生きものと寄り添って生きる希望を静かに広げている。

コメント

  1. 子どもと一緒に記事を読んで、こんなお祭りがあるなんて本当に素敵だなと思いました!森で新しい生き物に出会えるなんてワクワクしますね。実際に八甲田山の森を歩いてみたくなりました。子育てにも、自然の大切さを感じてもらえる良いきっかけになりそうです。

  2. いや〜森を守る活動が実際に結果に出てるのは、なんだか自分ごとのように嬉しいです。昔はうちの近くにも珍しい虫がいたんだけど、最近はなかなか見なくなってたし…青森のみなさんの取り組み、全国でも広がってほしいですね。

  3. フェスティバル、めっちゃ楽しそうです…!地元の中学生が新種を発見するとか夢がありますね。大学で生態系について勉強中なので、こういう地域ぐるみのプロジェクトは本当に参考になります。これからも多様な生きものが守られる森であってほしいです。

  4. 昔は私も孫たちと山に行って、見たこともない花や虫を発見しては驚いたもんです。このニュースを見て、とても懐かしく温かい気持ちになりました。若い人と年寄りが一緒になって森を守っている姿、とても応援したいです。

  5. すげぇ!ホシノタマトビムシ、写真で見てみたい!!地元でこんな発見があるなんて超かっこいいですね。自分も理科の自由研究、森でやってみたくなりました。