都会の片隅、静かな住宅街に立つ3階建てのシェアハウス「レインボーハウス」。昨春から始まった“七色バルコニー計画”が、住む人の心をつなぎ、思いがけない物語を生み出しています。住人5名それぞれの個性とやさしさが、ただの住まいを小さなコミュニティへと変えていった日々を追いました。
このシェアハウスが少し珍しいのは、共用スペースのバルコニーを、曜日ごとの“伝言板”として活用している点です。色とりどりの大きな黒板には、月曜から日曜まで、それぞれ模様や色が変えられ、住人が思い思いに書き込んだメッセージが毎朝更新されます。「今日のおすそ分け、トマトスープあり〼」「雨だったけど、駅まで傘を2本置きました」など、日々の小さな気遣いや出来事がたくさん並びます。
「最初は、オンライン内覧で見たときに『黒板付きバルコニーって何?』と不思議でした。でも実際住んでみると、用がなくても、ついバルコニーに出て誰かの言葉を読むのが日課になりました」と話すのは、IT企業勤務の酒井紗恵子(29)。彼女が仕事で忙しい朝も、パン屋の早番で働く根本陽介(35)が「焼きたてクロワッサン召し上がれ!」と手書きで報せてくれる。そんな些細な言葉のやりとりが、心の距離をやさしく近づけます。
立地も独特で、最寄り駅から徒歩14分と決して便利ではありませんが、周囲のカフェや公園が憩いの場になっており、休日には住人やご近所とも顔を合わせます。“コリビング”(暮らしと仕事の融合)としてリモートワーク用の半個室スペースも設けられ、気分転換にバルコニーへ出れば、誰かが描いた小さな絵や植物のスケッチが目を和ませてくれます。SNS上には「#七色バルコニー」の投稿がじわじわ増えており、遠方の親も住人の近況をほほえましく見守っています。
気になるプライバシーについては“静けさタイム”と呼ばれるルールが鍵になっています。毎晩21時から朝7時までは共用エリアでの話し声を控え、バルコニーも控えめの灯りになることが住人間の約束事。これがかえって、安心して個々の時間を過ごしつつ、朝になれば自然と「おはよう」と書き込める空気を生み出しています。看護師の赤澤優美(41)は「ここには無理に交流を頑張らなくても、みんなの“距離感”がバルコニーの色みたいにちょうどいい」と微笑みます。
専門家の間でもこの「緩やかなつながり型シェアハウス」が注目されています。住環境アドバイザーの北浦正也氏は「オンライン内覧の普及で、初対面でも事前に空気感を共有できるようになりました。小さな共用スペースや、朝だけの伝言板が無理ないコミュニティ形成に役立っている好例です」と話します。住人同士の何気ない言葉が、また新たな色を毎日重ねていく——そんな物語は今日も、どこかのバルコニーで静かに始まっているようです。



コメント
子どもを育てている身として、こういう自然なコミュニケーションがある住まいは本当に素敵だと思います。伝言板を通して毎日誰かの優しさを感じられるなんて、子どもも大人も安心して暮らせそうですね。
最近はご近所づきあいも減って寂しい思いをしていましたが、こういう温かいつながり方があるのだと知って嬉しくなりました。昔を思い出して懐かしくなりました。見習えるところは取り入れてみたいです。
僕は大学生で一人暮らししてるけど、正直羨ましい環境です!誰かの手書きのメッセージって、スマホよりずっとほっこりする気がします。住人同士の工夫や気遣いが伝わってくる記事で、読んでて元気が出ました。
近くにレインボーハウスがある住民です。通りがかるたびにバルコニーの黒板が可愛くなっているなと思って見ていました。地域の雰囲気も明るくしてくれて、嬉しい気持ちになります。
こういう新しい暮らし方が広まれば、独りで悩む人も少なくなるかもしれませんね。無理せず自然な交流が生まれるなんて、本当に暖かい。心がほっこりしました。