湯沢町の“町族”防災訓練が話題 子どもから商店街まで心つなぐ一大イベントに

カラフルなバンダナを身につけた老若男女が校庭で手をつなぎ、笑顔を見せている写真。 地域社会
湯沢町の防災訓練で、町族ごとに手をつなぎ絆を深める住民たち。

新潟県湯沢町で開催された“町族一丸”の防災訓練が、地元住民の心を強く結びつけ、SNS上でも「まるで家族のよう」と大きな話題となっている。人口減少や高齢化が進む地域社会にとって、ありふれた訓練のはずが、全国でも珍しいほど心温まるイベントとなった。湯沢町の独自コミュニティデザインや住民の想いが生んだ奇跡の光景を取材した。

きっかけは、2022年に地方移住してきた青年・佐倉悠斗さん(29)のアイデアだった。「町民全員が“町族”として助け合う仮想家族制度を作れないか」。それは、昔ながらの町内会単位の防災訓練に、もう一歩“家族のような絆”をもたせる試みだった。町役場の徳田良夫さん(56)は「一人暮らしの高齢者や移住者、子育て世帯。それぞれが声かけしやすくなる工夫が必要と考えていた時、この提案は温かく、現実的でした」と語る。

今年は、その“町族制”が正式導入され、町内の18の町族ごとに制服の“おそろいバンダナ”を制作。当日午前7時、町外れのさくら公園に、町族ごとの隊列がカラフルなバンダナを身に着けて登場した。地元小学校4年生の田所三咲さん(10)は「知らないおじいちゃんやおばあちゃんと手をつないで走るの、すごく楽しかった」と笑顔。商店街組合長の安田和彦さん(48)も「日ごろお話しない若い人と助け合う経験ができました」と語る。

訓練メニューには、従来の避難訓練に加え、町族ごとの共同炊き出しや、“お宝探し救出ゲーム”も加わった。町の特産米を使ったおにぎりを、高校生グループが高齢者へ手渡す風景や、仮想の被災現場で皆が協力してペットボトルを救出するシーンでは、笑顔と歓声が絶えなかった。訓練後のフィードバックタイムでは、移住したばかりの会社員・中村千夏さん(31)が「生まれて初めて“町の家族”ができた気がします」と語り、多くの人の胸を打った。

SNSコミュニティ「#湯沢町族」には激励と感動のコメントが数百件。「ふるさとが10倍好きになる企画」「都会にも欲しい」「来年は子どもと参加したい」と投稿が相次ぐ。一方、専門家の地域ブランド研究家・前原日出夫氏は「多様な繋がりが重要な今、人の気持ちを動かす防災訓練が新たな価値を示した」と評価。

訓練の最後には、町民みんなで校庭に大きく「つながる」という人文字を作った。参加した全員が、まるで本当の家族のように手をつなぎ、涙ぐむ人も多かった。今年の防災訓練は、単なる安全確保を超え、“郷土愛”と“幸せの絆”そのものを感じさせる一日となった。

コメント

  1. 町族制度、素敵ですね!普段なかなか話せないご近所の方と子どもを通じて助け合えるなんて、本当の家族みたいで感動しました。我が家も来年は親子で参加してみたいです。湯沢町のみなさん、温かいニュースをありがとうございます。

  2. いやあ、こういう取り組みは本当に懐かしくも新しいですね。昔のようなご近所付き合いがあった頃を思い出しました。高齢者にとっても心強いですし、若い方とも自然に話せそうで、ぜひ他の町でも取り入れて欲しいです。

  3. お宝探し救出ゲームとかめっちゃ楽しそう!防災訓練って正直だるいイメージあったけど、こうやってイベント化したらみんなやる気出ると思う。うちの地元でもやってほしいなぁ。

  4. うちの町がこんなふうに記事になってるの、なんだか誇らしい気持ちです!普段は顔を合わせるだけだった人たちと、バンダナ巻いて一緒に頑張ったこと、一生の思い出になりました。全国の人にも見てほしいです。

  5. 正直、初めは仮想家族ってなんだろう?って半信半疑だったけど、終わってみれば町中に笑顔が増えててびっくり。『つながる』って本当に心に残ります。これからもこんなステキな町でいたいなと思いました。