夏の夕暮れ、西都市の議会前広場には、国籍も年齢も背景もさまざまな人々が、手をつなぎながら歌声を重ねていました。「住む人みんながこの街の仲間」という思いから生まれた“誰でも市民合唱団”が開いた特別なコンサートの日——そこでは、市民権を巡る垣根が音楽によって美しく溶け合う光景が見られました。
合唱団を発足させたのは、看護師の岡島楓(34)とパン職人の李明俊(38)。岡島は「母が外国籍で、幼い頃よく“あなたにもこの町の一員になれる日が来る”と励ましてもらった記憶がある。大人になって、自分も同じ気持ちを分かち合いたかった」と語ります。李は4年前に帰化した経験から「市民権取得は大きな喜びだったが、申請を待つ間もずっと、近所の人たちが誕生日を祝ってくれたり、一緒に畑仕事をしたり…心はずっと“ここ”の住人だった」と微笑みます。
この日のコンサートには、市民権を申請中の人、国際結婚の家族、留学生、そして地域の高齢者や子どもたちが参加。指揮者の鈴木菜々(21)は、楽譜の代わりに、参加者がそれぞれの母語で「ようこそ」「ありがとう」と書いた色とりどりの旗を楽器代わりに振る演出を提案しました。うちわ代わりの旗が夕風にひらひらと舞い、合唱が進むほどに観衆の拍手が膨らみます。
小学生の林美羽(11)は、韓国にルーツを持つ友人・キム レナと「ともだち賛歌」を歌ってから、「私はまだ市民権を持ってないけど、みんなとこうして大きな声を出せる。心の中ではもうずっと“市民”だよ」と笑顔に。ステージ後も、参加者同士で自家製の料理を交換したり、SNSで「#誰でも市民コンサート」と投稿する輪が広がりました。
翌日、西都市議会はこのイベントを参考に、住民がより柔軟に社会保障サービスを利用できる「暫定市民証」制度の導入を審議することを決定。これを知ったSNSでは「違いが力になる街、素敵!」「住民票じゃなくても共に生きる権利があるって思えた」「私の街でもこんな取り組みが始まったら……」と温かなコメントがあふれました。合唱団の歌声が、街や制度さえ少しずつ動かし始めているようです。
コメント
子育て中の親として、こういう多様な人たちが一緒に楽しめるイベントがある街、羨ましいです!子どもにも「みんなちがってみんないい」って本当に伝えられそう。主催者の方々の思いに心から拍手を送りたいです。
わしも昔、移り住んできた頃はなかなか馴染めんかったから、今の若い人たちや新しく来た方が音楽で心を寄せ合うって、ええことやと思う。歌には不思議な力があるもんじゃな。
近くでこんな素敵なイベントが開かれてたと知ってびっくり!ニュースで見たけど、カラフルな旗が風に舞う光景、ほんとに心あたたまりました。来年はぜひ参加したいです~。
自分も留学生の友達が多いから、こういう場が広がってほしいって思います。言葉や市民権の壁って、こうして音楽で乗り越えられるんですね!自分の学校でもやってみたいな。
みんなでお歌、懐かしいねぇ。知らない方とも手をつないで笑いあえる場が増えて、昔の“ご近所付き合い”にちょっと似てるような気もします。心のふれあい、大切にしたいですね。