中山間地の過疎化が進む中、岩手県・榛葉村(ついばみむら)では、村の未来を変える小さな奇跡が生まれている。停留所ごとに咲く花の名前をもらった“緑のバス”が、この春から運行を開始し、村に新しい風を運んでいる。
榛葉村は20年前、人口の半分が高齢者となり、かつて活気に溢れていた祭りも絶え、人の気配がまばらになっていた。そんな村を変えたのは、村役場に勤める山白由香(やましろゆか・34)だった。彼女は、地元の子どもたちとお年寄り、そして長年村を離れていた移住希望者たちの声を一つにまとめ、地域資源の再発見プロジェクトを立ち上げたのだ。
村の宝物は、四季折々の花が咲く丘や、古くから作られる桑の葉茶、そして笑顔で迎えてくれる住民だと由香は気づいた。そこで、村内をぐるりと巡る電動ミニバスの停留所ひとつひとつに、桜、蓮華草、紫陽花などその季節の花名をつけ、それに合わせて地元の小学生(9〜11歳)が毎朝停留所に花を活ける“おもてなし”を始めた。運行初日は、帰郷した70代夫婦が「小学生時代に見た風景が戻った」と涙を流し、SNSでは「榛葉村に“心のふるさと”を見つけた」と感動の声が広がった。
またこの“緑のバス”は、地元野菜や桑茶、手作り和菓子などの地産地消品を荷台でシェアする仕組みも備えている。村を訪れた観光客がバスチケット代わりに自分の町のおすすめ品を交換していくため、乗車すると毎回違った出会いがあり、都会のファンも増加中だ。週末には、伝統の紙芝居劇団のツアー公演もバスに同乗。「まるで動く村祭り」とSNSで話題となり、週末の便はすぐに定員になる盛況ぶりだという。
この取り組みを支えるのは、村民たちの“みんなで一緒にやる”精神だ。毎月第1日曜日には、村の若者やお年寄りたちが集まってバスルート周辺の清掃と、特産品の試作会を行う“グリーンサークル”も結成された。都市部から移住を決めた薬師寺青葉(やくしじあおば・29)は、「見知らぬ村だった榛葉が、今や人生で一番の場所になりました。人も景色も温かい」と笑顔を見せる。専門家の間では“住民参加型交通が地域再生のモデルになる”と高い評価の声が上がっている。
「バスの窓から新芽が見えるたび、新しい誰かと出会える気がします」。村の小学4年生・森原荘一(もりはらそういち・10)の言葉が、榛葉村の未来がたしかに動き始めていることを象徴している。
コメント
うちにも小学生の子どもがいるので、毎朝お花を活けるなんて本当に素敵だなと思いました。バスで人がつながる村、子育てするならこんな場所が憧れです。ほっこり元気をもらえました!
昔は私の住んでいた町にもお祭りがあって賑やかだったのを思い出します。若い方が中心になって村を元気にするなんて本当に素晴らしいですね。機会があれば榛葉村にも行ってみたいです。
こんな仕組みが自分の地元にもあれば、過疎化もストップしそう。紙芝居のツアーとかバス停のお花とか、地元愛があふれてて感動!全国に広がってほしいな〜。
なんだか村中のみんなで頑張ってて、読んでるだけで胸が温かくなりました。都会の人との物々交換も面白いですね。私も何か参加できることがあれば手伝ってみたいです!
移住を考えていろいろ調べてたけど、榛葉村のグリーンサークルみたいな温かい雰囲気はなかなかないですよね。人のつながりを感じられる村、理想です!