小さなシアターカンパニー「ルミエール」の春公演で、思いがけない“奇跡”が巻き起こった。舞台上の即興劇に地域の観客やスタッフ一人ひとりが溶け込み、生き生きと結びつく様子が、SNSで大きな感動を呼んでいる。
劇団ルミエール(代表:柳橋恭一)は、札幌市内の老舗劇場「フェリシア座」にて一夜限りの即興公演を開催した。演目は毎回アドリブを軸に観客のアイデアを取り入れる形式だが、今回はさらにスタッフ、観客、舞台美術まで“劇空間にいる全員”が物語を動かす特別仕様。開演直前、舞台照明の担当だった堀内桐子(48)が予期せぬ体調不良で不在となったが、ピンチの中、客席にいた地域の電気工事士・谷中真治(41)が「力になれるなら」と申し出たことから、物語は思わぬ方向へ進み始めた。
「照明って日常の光と違う世界が広がるんですね」。谷中さんが見習いながら操ったスポットライトは、役者一人ひとりの“心の変化”にぴたりと寄り添い、舞台を温かく包み込んだ。さらに、2階席最前列にいた主婦の佐原麻友(35)が幕間に自作のペーパークラフトを舞台美術の小物として差し出すと、キャストの大野理玖(27)は即興でその折り紙を“魔法の扉”に見立ててストーリーにとりこみ、観客は大いに沸いた。劇団員のひとり、三橋智里(24)は「予想もつかない化学反応の連続。みんなで物語を紡げるって、こんなにあたたかいんですね」と目を潤ませた。
公演終盤には客席で用意されていたカラフルな風船が全員に手渡され、観客も役者も一緒に「見えない糸」を空間いっぱいに描くラストシーンへ。SNS上では「#みんなのルミエール」が一時トレンド入りし、「舞台のはずが祝祭のようだった」「見知らぬ人とも心がつながった」と喜びの声があふれた。
この日を見守った演劇評論家、石神友紀(55)は「偶然の積み重ねから生まれる美しさは、演劇の本質」と冷静に評する。現場には、自分の得意なことを自然に生かし合う人々の優しさと即興ならではのライブ感覚が絶妙に調和し、まるで舞台上に“見えない糸”がめぐっていた。
公演終了後、劇団代表の柳橋さんは「こんなに楽屋と客席が一体になる舞台は初めて。舞台をきっかけに地域が一歩優しくなれたら」とほほえんだ。新たな絆の物語は、観客の温かな拍手とともに静かに幕を下ろした。
コメント
小学生の娘と読ませてもらいました。地域のみんなが役割を持って参加できるなんて、本当に素敵です!今度は親子で観に行きたいです。
若いときに観劇が好きでしたが、最近は遠ざかっていました。このニュースで久しぶりに「舞台の魔法」に心が温まりました。世代を越えた優しさ、いいですね。
たまたま隣町の大学生です。こういう“全員参加型”の舞台って斬新だし、SNSで一体感が拡がるの分かります!自分も何かクリエイティブなことやってみたくなりました。
僕の店のお客さんにも劇団の人がいるので他人事とは思えません。みんながちょっとずつ力を貸して一つの作品ができるなんて、町全体が家族みたいで嬉しい気持ちになりました。
なんて優しい話なんだろう。トラブルすら物語のスパイスになるなんて、これぞ生の演劇の良さですよね。読んでるだけで泣きそう。次は絶対に観に行きます!