80代の父とデジタル世代“養子兄弟” VRでつながる“多世代家族”が地域の話題に

日差しの差すリビングで、盆栽を挟んで笑顔で座る高齢の男性と若い男性がタブレットの画面を見ている様子。 家族構成
仮想空間と現実をつなぐ“バーチャル兄弟”の温かな交流。

かつて家族と言えば血のつながりが当たり前とされた時代。近年では多様な家族のかたちが広がりつつありますが、京都府在住の佐和田勇一さん(84)が始めた“仮想兄弟養子縁組”は、地域にささやかな驚きと温かな話題を呼んでいます。

佐和田さんは団塊世代の元教師。20年前に妻と離婚し、ひとりで静かに老後を送っていました。ある日、趣味の盆栽をSNSに投稿したことがきっかけとなり、東京都のデジタルクリエイター・三島瞬也さん(27)と知り合います。瞬也さんは、小学生のころから両親と祖父母を亡くし、寂しさを抱えながらITの世界に飛び込んだ青年でした。

二人はVR(仮想現実)空間で盆栽の手入れを教え合い、家族のような親密さで「兄弟」と呼び合うようになりました。昨年、勇一さんは「本当の兄弟になってみよう」と提案し、“養子縁組”を仮想コミュニティで宣言。三島さんも快く応じ、以来『バーチャル兄弟家族』として地域やSNSで注目を集めています。

「本当に血がつながっていなくても、こうやって気持ちで家族になれるのは素敵です。盆栽も、一緒に育てると愛情が倍になりますしね」と佐和田さんは笑顔。三島さんも「個人の歴史も年齢も、VRの中では関係ない。勇一さんは僕の“家族そのもの”です。人生で初めて、故郷のような安心を感じています」と語ります。

二人の“家族”は少しずつ広がっています。近所に住むLGBTQカップルや、ひとり暮らしのシニアもVR空間に参加。隔週ごとにデジタル茶話会や、“バーチャル家族運動会”といった独自のイベントを開催し、世代や境遇を越えたコミュニティが誕生しました。SNSでは「これぞ本当の多様な家族」「勇気をもらえる!」といった声が相次いでいます。

家族社会学者の山科英理教授(56)は「養子縁組の概念すらアップデートされる時代です。互いの尊重とささやかなお節介、それが新しい絆を育てています」と感心を隠しません。現代の高齢社会にあって、デジタルの力で寄り添いあう新しい“家族の形”。その輪は、静かに全国へと広がりつつあります。

コメント

  1. 子育て中の身として、とても勇気をもらいました!うちの子たちにも、血のつながりを越えて大切にできる人との出会いがあれば素敵だなと感じます。時代が変わっても、心の絆って大切ですね。

  2. ワシも最近ひとり暮らしで寂しさを感じることが多かったけど、この記事読んでなんだか希望が持てました。VRは難しそうじゃが、新しい家族の形も悪くないのう。

  3. めっちゃほっこりしました!SNSって怖いこともあるけど、こうやって人とつながって本当の家族みたいな絆が生まれるのって、すごく素敵だと思います。私もいつかそんな関係築いてみたい!

  4. 佐和田さん、普段からお元気だなあと思っていましたが、こんな素敵な活動をされているとは知りませんでした。地域も明るくなった気がします。うちの父にも紹介しようかな。

  5. LGBTQの友達がいるので、とても心が温かくなりました。世代も価値観も違う人同士が、VRという場所で隔たりなく家族になれるなんて、本当に多様性の時代だなと嬉しくなりました!