奇跡のフィルムが結ぶ町の絆――廃館寸前の映画館が再生、村人が手作り映画でロードショー

満席の映画館で幅広い年代の住民たちが並んで映画を楽しんでいる様子。 映画
地域の人々が音羽座シネマで手作り映画の上映を温かく見守る。

地方の小さな町・音羽村で、人々の心を温める奇跡のロードショーが開かれた。閉館間近だった町唯一の映画館が、住民たちの優しさと情熱で蘇り、手作り映画が満席上映という感動の舞台になった。

「子どものころ通ったこの映画館を、思い出のまま残したい」——会社員(42)の岩淵和雄さんのひとことから、物語は始まった。1年前、観客減少で閉館が決まった『音羽座シネマ』。村出身の映画好き住民や高校演劇部の生徒、そしてフィルム映写の古参技師・松浦正蔵さん(68)が力を合わせ、廃館までの数か月、『町のみんなで映画をつくろう』プロジェクトをスタートさせた。

シナリオは地元の主婦(37)・花村瑞穂さんが執筆。「村の四季と小さな奇跡」をテーマに、出演は農家から郵便配達員まで総勢38名。主演の高校生・西村大空さん(17)は「最初は緊張したけど、みんなで笑いながら撮影できた」と瞳を輝かせる。作中メインテーマ『きずなのうた』は音楽好きの保育士・矢吹志穂さん(29)の書き下ろし。終演後は全員で合唱し、涙と笑顔が会場を包み込んだ。

試写会では、招待された小学生(8)から80代の栄養士まで、幅広い世代が並び、地元産スープと手作りクッキーを片手に映画を鑑賞。舞台挨拶に立った松浦正蔵さんは、「シネマのフィルムには、みんなの思い出という ‘魔法の粒’ が詰まってる。今日はその粒が、また新しい奇跡を生み出した」と場内を和ませた。

SNSでは「こんな時代に、みんなで映画を作って観るなんて素敵」「一生残したい大切な思い出になりました」と感激の声が続々。ロケ地となった音羽山の青々とした風景や、エンドロールで映し出された駅前商店街の手作り看板には、全国の人々から温かいメッセージが寄せられている。映画館は閉館予定を撤回し、今後は『町みんなのシネマ』として月1回の自主上映を続けることが決定。子どもたちの「将来は大人になってもここで映画を観たい」という夢が、またひとつこの町に根付いた。

地域の絆と小さな奇跡が生み出した、優しさあふれる“映画の町”。そのスクリーンには、今日もだれかの想い出が新しい光として映し出されている。

コメント

  1. 心があたたかくなりました。子どもと一緒に観に行きたくなる本当に素敵なお話ですね!こんな場所が近くにあったら、家族の思い出を作るのにぴったりだなと思いました。ありがとうございました。

  2. 昔は映画館に家族や友だちとよく通ったものです。今も昔も、人とのつながりが一番大切なんですね。音羽座シネマさん、これからも長く続いてください。

  3. 地元の映画館でみんなで映画作るとか、まさに青春ですね!自分も演劇部なので、めっちゃ共感しました!全国の小さな町にもこんな輪が広がったら素敵だと思います。

  4. 映画作りって難しそうだけど、みんなが手伝ってる様子にほっこりしました。音羽座の映画館、うちの店の看板もエンドロールで見つけて感激です。また観に行きます!

  5. この記事を読んで涙が出ました。最近は寂しいニュースばかりだったので、こういう幸せな物語が現実の町でも生まれていると知り、勇気をもらいました。私も何か町のためにできることを探したいです。