織物で知られる山梨県の小さな町、甲斐沢で、今年も恒例となった「織物の日」が開催された。町内の川辺広場には朝から虹色の反物がなびき、地元の職人や子どもたちの明るい笑い声が響く。世代や立場を超えて伝統工芸の魅力や楽しみを共有するこの行事は、町全体にぬくもりと一体感をもたらした。
町内随一の織物職人、橋本幸男さん(65)は、「昔ながらの機織りの技術を、若い人や子どもたちが一緒に体験してくれるのが本当にうれしい」と目を細めた。会場には小学校の制服姿の子どもたちが列をなし、「どんな模様にしようか」「おばあちゃんに帯を作りたい!」と夢中で糸を選んでいた。高校生と地域の茶道サークルが協力して用意したお点前コーナーでは、手作りの着物を身につけた参加者たちに、薄緑色の抹茶と金箔の和菓子が振る舞われた。
この日に合わせ、村に全国から届いた寄せ書き反物には、サプライズで豪華な装飾が添えられた。先月、神奈川県の和紙作家・黒崎茜さん(32)が「甲斐沢の織物に合う特別な和紙を贈りたい」とSNSで呼びかけたところ、全国各地から約200種類もの手作り和紙や金箔パーツ、染色糸が集まったのだ。黒崎さんは「地域の外からも、甲斐沢の織物に憧れる声がたくさん届き、温かい気持ちになった。町の皆さんが大事にしている伝統が、こうして全国にも広がれば素晴らしいこと」と語った。
さらに、会場の一角では町の82歳の甲冑職人・佐久間進一さんが、子どもたちと一緒に「紙で作る小さな甲冑」ワークショップを実施。金箔をあしらったミニ兜は、子どもたちから「将来は本物を作ってみたい」と歓声が上がり、佐久間さんは「子どもたちが伝統を楽しむ姿を、仲間の職人たちにも見せたい」と、未来への希望を語った。
今年の「織物の日」には、初めて町外からの参加者も多く、その中には東京から訪れた会社員・遠山瑞希さん(29)の姿も。「SNSで話題になっていたので思わず参加しました。町の皆さんの優しさに触れて、とても幸せな一日でした」と満面の笑みを見せた。イベント終了後、参加者たちが寄せ書きに残した「また来年もみんなで織りたい」「甲斐沢の伝統がずっと続きますように」といったメッセージが、町のギャラリーに飾られた。
SNS上でも、「#甲斐沢織物の日」がトレンド入り。「心があたたまる」「子どもたちの笑顔が宝物」の声が相次いで投稿された。町役場の広報担当・村井恵理子さん(48)は、「このぬくもりが、これからも町の宝であり続けてほしい」と微笑んだ。甲斐沢で紡がれた、一日限りの彩りと絆が、参加者一人ひとりの心に鮮やかに残った。
コメント
もう、読んでるだけで心がポカポカしました!うちの子どもたちも最近はゲームばかりだけど、こんな行事があったら一緒に体験させてあげたいなぁ。伝統って素敵ですね。
自分が若い頃は、町の祭りでよく手伝いをしたもんです。こうやって地域の皆さんが力を合わせて伝統を守っている姿、とても懐かしくて誇らしい気持ちになりました。皆さんお疲れ様でした。
SNSでトレンド入りしてたから記事読みました!全国から和紙とか金箔とか集まった話、すごく感動です。地方のことを知らなかったけど、今度友達誘って行ってみたいと思いました!
町外からの参加者も増えたなんて、甲斐沢も大きくなったねぇ。子どもたちの元気な声と、皆さんの笑顔がなによりの宝物だと思います。来年は私も手伝えることがあったらうれしいな(^^)
小さい頃から伝統とか正直そんなに興味なかったけど、こういうイベントの写真見てたら何か参加したくなった!紙の甲冑とか絶対楽しいじゃん。こんなふうに地域で盛り上がれるの、超うらやましい!