アーティストたちの共同茶室が誕生 町にひとつの小さな美術館

色とりどりの絵や漫画が壁に貼られ、畳に人々がくつろぐ小さな木造茶室の室内風景。 芸術
アートと音楽、笑顔が集う新潟の個性的な茶室「アーテア」。

絵画や版画、漫画、音楽——多彩なアーティストが力を合わせ、一つの小さな茶室を建てました。その不思議な空間が、地域の人々を優しくつなぎ、毎日を少しだけ幸せに変えています。

新潟県の海沿いにある小さな町、青松町。ここに、最近“アーテア”と呼ばれる木造の茶室が誕生しました。発起人は版画家の水島汐里(38)。長い間個展を開いてきた水島は「もっと気軽にアートと触れ合える場所を作りたい」と考え、画家の小田切隆司(52)、漫画家の佐々波あき(29)、音楽家の柴田詞音(40)たちと協力し、空き地を利用して茶室を建てあげました。山から切り出した竹で骨組みを作り、色とりどりの絵や漫画の原画を壁紙のように貼り、窓からは海が見渡せます。茶室の片隅には古いオルガンが置かれ、タイミングによっては即興コンサートが開かれることも。

この茶室は、営業時間も決まっておらず、ドアの上に掛けられた小さな木札が「どうぞ」の時だけ誰でも立ち寄れます。訪れた人々は好きな絵に見入ったり、畳に寝転んで漫画を読んだり、それぞれのペースで過ごしているようです。ある日曜の昼、地元の小学六年生、安藤涼介くん(12)は「柴田さんのピアノと、壁に貼ってあった佐々波先生の猫の漫画、どっちも見られるから、家より楽しい」と目を輝かせていました。

来訪者たちによると、アーテアでは時おり“サプライズイベント”も。絵筆が置いてあり、誰でも好きなようにひと筆加えてもよいことになっており、茶室の障子には小さな猫からカラフルな風景まで、さまざまな絵が次々に生まれています。また、漫画家の佐々波は「実は毎週1コマずつ新しい物語を障子に描いてるんです」と笑って話してくれました。その物語は、町の子どもたちが考えたセリフを貼り付け加えて完成していく“みんなの連載漫画”になっています。

アートとお茶、音楽が混ざり合ったこの茶室は、町で暮らす老若男女の交流の場としても機能しています。普段あまり話さない近所のお年寄りと若いカップルが、絵画のことや子どものころの話を自然と分かち合う様子も見られます。町の主婦、今泉優子さん(37)は「ここに来ると、なんだか気持ちが柔らかくなって、誰とでもおしゃべりしたくなるんです」と顔をほころばせます。

SNSでも話題になり、「地元にこんな場所ができてうれしい」「漫画や音楽にふれながらお茶も楽しめるなんて贅沢!」という声が上がっています。地域交流の研究者・田辺徹教授(横浜市立大学)は「アートが自然なかたちで人をつなぎ、町全体の温かさを引き出しています。日本各地にこういう場所ができれば、もっと暮らしが豊かになるでしょう」と語っています。

小さな茶室から広がる、ほんのり甘い幸せ。今日も誰かの小さな絵と音楽が、町にひとつだけの美術館として、そっと居場所になっています。

コメント

  1. 小学生の息子と一緒に記事を読みました。子どもたちが自分で漫画にセリフを考えたり、アートに自由に参加できるのは素敵ですね。仕事や家事の合間に、親子でふらっとこういう場所に立ち寄れたら、心もリフレッシュしそうです。青松町がちょっぴりうらやましいです!

  2. ワシは近ごろ外に出る機会が減っとったが、こんな茶室があれば覗いてみたいのう。若いもんと昔話しながら、お茶でもすすれたら、昔のお茶会のことも思い出しそうじゃ。みんなで作る障子の絵も、ほのぼのしていいねえ。

  3. 大学生です!いやー、地方の町にこんなカッコいい場所ができるなんて感動です。自分も絵を描くのが好きだから、みんなで作るアート空間ってめちゃくちゃ憧れます。次の帰省の時、絶対寄ってみたい!

  4. 家から歩いて10分のところなんです。先日ふらっと立ち寄って、柴田さんの即興コンサートに偶然遭遇。知らない人とも自然と会話ができて、帰る頃にはすごく幸せな気持ちになりました。こういう場所がずっと続きますように。

  5. こんな温かいニュースを読むだけでほっとします。SNSでも話題になってるけど、現実にもどんどんこういう居場所が増えたら嬉しいですね。アートも音楽も日常に溶け込んでいくと、世界がやさしく感じられそうです。