南アルプスの名峰・木曽駒ヶ岳の稜線に、早朝の静寂をやさしく包み込む歌声が響いた。登山者たちが偶然集い、自然発生的に結成された『ご来光合唱団』が、朝日に照らされたアルプスを祝福する心温まる出来事が起きた。
週末の登山口はまだ暗く、ヘッドランプの光が点々と登山道を照らしていた。この日、音楽教師の小野寺早紀(32)は同僚とともに頂上を目指していた。途中、八ヶ岳での登山経験豊富な会社員・佐藤洋介(44)らと出会い、話が盛り上がった。やがて情報交換の輪は広がり、岩登りが得意な学生グループや静岡から来た主婦登山チームも合流。「せっかくなら、ご来光をみんなでお祝いしませんか」と誰かが声を上げると、自然と歌の提案が持ち上がった。
ご来光直前、稜線から雲海を望める絶好のスポットで、手を繋いだ登山者たち。小野寺さんがピッチをとり、懐かしの登山歌『ふるさと』を歌い始めると、アルプスから吹くさわやかな風にのせて歌声が広がった。トレッキング途中で合流したドイツ出身の自然ガイド、マルクス・シュナイダーさん(39)も口ずさみ、英語やドイツ語のパートが自然に加わる。朝日の光が一人ひとりの顔を穏やかに照らし出し、老若男女、国を越えた人々の心がひとつになった。
現場に偶然居合わせた地元ガイドの田嶋孝年さん(57)は「登山は自然と人をつなげる力があると信じてきましたが、まさかこれほど美しい調和を目の当たりにできるとは」と感慨深く語る。参加者たちはSNSで「生涯忘れられない朝になった」「みんなでアルプスに“ありがとう”を伝えた」と感動を分かち合い、一時は合唱動画が南アルプスの話題ランキング1位となった。
その後、合唱団はその場限りのものから、小さな伝統へと広がりつつある。木曽駒ヶ岳周辺の登山道では「次はどんな歌を歌おう?」と見知らぬ登山者同士が語らう光景が自然と生まれている。「山頂での出会いは一期一会ですが、その一瞬を大切にしたい」と佐藤洋介さん。一人で登る人にも、心がふんわり温まる居場所が山にはある。今夏、稜線からまた新たな歌声が生まれるかもしれない。
コメント
こんな素敵な出来事が実際にあったら、子どもたちと一緒に登って参加したいです!本当に心がほっこりしました。自然と歌でみんなが繋がるって、最高に幸せですね。
年をとってからはなかなか山に行けませんが、昔を思い出しました。皆で合唱するなんて、本当に美しい光景だったでしょうね。記事を読んで胸が熱くなりました。
大学の仲間と山登りをすることがあるけど、知らない人同士で歌を歌うなんて新鮮!今度登ったとき、誰かに声かけてみたくなりました✨こんな山の楽しみ方も憧れます。
地元にこんな温かいニュースがあるなんて嬉しいです。登山客と山がひとつになる瞬間、ぜひ見てみたい!次のお休みに家族で見に行こうかな。
普段は仕事でピリピリしてばかりですが、この記事のおかげで気持ちが和みました。知らない人と一緒に朝日を見て、歌って…そんな一体感、羨ましいです!