小劇場の灯り、町をつなぐ奇跡のワンシーン ~消えた照明を照らしたミュージカルの心~

薄暗い小劇場で観客がLEDキャンドルやスマートフォンのライトを掲げ、舞台をやさしく照らしている様子。 演劇
観客の光に包まれながら続いた奇跡のステージ。

小さな劇場が大きな優しさに包まれた夜があった。舞台に立つ誰もが一生忘れられない、と語るほどの本当の舞台奇跡は、静かな町の片隅でひっそりと起こった。

新潟県の文化通りにある『ランタン座』は、150席の小さな劇場だ。この春、地元劇団「ハミングバード」がオフブロードウェイ風のオリジナルミュージカル『虹色の駅』を上演していた。公演3日目の夜、突然の落雷による停電で劇場は一瞬にして暗闇に包まれた。照明スタッフの徳永優希(27)は「数分で復旧するはずが、まったく電気が戻らない。舞台どころか、観客も不安な表情でした」と振り返る。

「このままではせっかく集まったお客さんに申し訳ない」と、団員の吉野詩織(23)は手探りで劇場のロビーへ。そこには、観劇に訪れていた主婦の北原雅美(39)が持参していたキャンドル型LEDライトや、学生の大橋武宏(19)が持っていたスマートフォンのライトなど、観客たちがそれぞれ光を灯している姿があった。「ライトを舞台に!」誰ともなく声が上がり、次々と客席から光が集まっていく。

思いがけない照明となった小さな光の海の中、劇団員は再び舞台に。音響用の拡声器は動いていたため、アカペラとピアノの音色に合わせて、キャストたちは即興で動きを調整しながら歌い、踊った。客席と舞台がひとつになった劇場は、幻想的な光に包まれ、一体感と温かい拍手が響く。「こんな舞台に出会えたのは生まれて初めて」「涙が止まらなかった」とSNSでは感動の声が相次いだ。

劇場スタッフの佐久間一朗(52)は「普段は自分たちが照明を用意しますが、今日はお客さんに助けられた。本物の舞台マジックでした」と話す。その夜をきっかけに、地元商店街も協力して備蓄LEDランタンと非常用バッテリーを寄付。町の祭りやイベントで使い回す“みんなの照明隊”ができたという。

舞台監督の高城恵(44)は「観客、スタッフ、キャスト、みんなの光がひとつになった夜が、町の新しい絆を照らしました」と笑いながら語っている。オフブロードウェイの名作に負けない“町の奇跡”は、今も色褪せず、次なるドラマの種を静かに育てている。

コメント

  1. 子どもと一緒に小劇場をよく利用するので、本当に心温まるお話だなと思いました。子どもにも『困ったときはみんなで助け合うんだよ』と教えられる素敵なエピソードですね。

  2. 私は近所に住んで60年以上ですが、こんな出来事が町で起きていたなんて知らず、記事を読んで胸が熱くなりました。昔からの地域の絆が今も新しい形で受け継がれているのですね。応援しています。

  3. 劇場の照明が消えた時に、即興で集まった光で舞台が続いたなんて、本当にドラマみたいです!自分も大学の演劇サークルで活動してるので、こういう奇跡の瞬間にいつか立ち会えたらなって憧れます!

  4. あの日たまたま観劇してました!本当に感動して、今も忘れられません。みんなで光をつなげて、あんなに温かい一体感を感じたのは初めてでした。素敵な思い出をありがとうございました✨

  5. 普段は舞台にはあまり興味がなかったけど、この記事を読んでちょっと劇場に足を運んでみたくなりました。みんなの優しさや団結力ってやっぱりいいものですね!