山深い長野県の小さな山間集落・星ヶ原。この地で毎年開かれるトレイルランニング大会が、今年は思いがけないぬくもりと優しさのドラマを生み出しました。地元とランナーがつむぐ、“魔法のトレイル”で起きた物語をご紹介します。
標高1000メートルに位置する星ヶ原の山道は、苔むした林道や清流沿いのフカフカのトレイルが続くことで知られています。今年の「星ヶ原トレイルチャレンジ」には、全国から200名以上のランナーが集結。走行距離20km、累積標高差1200mを駆け抜けるタフなコースですが、スタート直後から随所で心温まる光景が広がっていました。
本大会で話題を呼んだのは、地元の農家・佐伯一馬さん(62)を中心に広がった「おすそわけ補給ステーション」。本部の公式補給ポイントとは別に、佐伯さんや集落の有志が林道脇に特設テーブルを用意。自家製の梅干しや手作りおにぎり、山のハーブを使った特製ジンジャーエール、さらに裏山でとれた新鮮なキノコのスープまで、ランナーの誰もが笑顔になる補給食が次々登場しました。ランナーたちは一口食べるごとに「エネルギーも気持ちも満タン!」と声を弾ませ、SNSでは「#星ヶ原ステーション」が一時地域トレンド入りしました。
また、この日最大の“奇跡”は中盤、標高950m地点で起こりました。福岡からの参加者、看護師の高倉三恵さん(34)はコース途中で愛用のランニングシューズが壊れてしまいました。困り果て歩みを止める高倉さんの元に、地元中学生の田代洸太くん(14)が手作りのシューズカバーを持参して駆けつけます。洸太くんの家族は昨年同じ失敗をしたランナーを励ました経験から「念のため」と準備していたのです。カバーのおかげで高倉さんはレースに復帰。涙ながらにゴールした彼女の姿は、多くの人の胸を打ちました。
さらにユーモラスな出来事も。ランナーの吉住智広さん(45)はハイドレーションパックの水が途中で空になってしまい、地元小学生グループが竹製のカップで湧き水をすくい「どうぞ!」と笑顔で差し出しました。その場に居合わせた環境コンサルタントの研修生・吉原華子さん(27)は「子供たちが目を輝かせて力になろうとしてくれて感動した」と語ります。
大会後、星ヶ原の住民たちは地元公民館でランナーや家族とささやかなふれあい交流会を実施。「走るたび、補給食やお水をもらうたび、心もエネルギーで満ちていった」と参加者の一人、田中翼さん(29)は振り返ります。SNSには「魔法のトレイルは人の優しさでできている」「何度でもこの村に走りに帰ってきたい」という声が寄せられ、星ヶ原トレイルは最もあたたかい大会として語り継がれそうです。
コメント
小学生の子たちが竹のカップでお水を渡したエピソード、読んで涙が出ました。うちの子にもこういう経験をさせてあげたいな。星ヶ原の皆さん、温かいご縁をありがとうございます。
私は今は走れませんが、若いころ山道を歩いた事を懐かしく思い出しました。村の皆さんとランナーの交流、本当に素敵ですね。日本の田舎にはまだまだこんな温かい絆が残っているのですね。
洸太くんの行動、めちゃカッコいいっす!困ってる人のために、自分で準備してたとかマジ尊敬します!こんな大会なら見学でも手伝いでも行ってみたいなぁ。
星ヶ原のトレイル大会、今年も無事に終わって良かったです。参加者の笑顔や村の活気を間近で見るたび、心がぽかぽかになります。また来年、楽しみにしています!
走るのは苦手ですが、こういう温かい話を読むだけで元気をもらえます。人の優しさが詰まった星ヶ原のトレイル、いつか応援に行きたいですね♪