高層ビルの屋上に新たな命が芽吹く——東京都中心部で始まった「グリーンルーフ・ハーモニープロジェクト」により、かつて無機質だった屋上エリアが“空中の森”へと生まれ変わりました。ここでは、地域の住民が力を合わせてゼロエミッションを達成し、小鳥や蝶、希少な草花まで多様な生態系が守られています。その一歩ずつの歩みが、都会での新しいコミュニティのあり方をそっと教えてくれているのです。
このプロジェクトは、設計士の川瀬武彦(46)と小学校教師の野々宮彩香(32)が中心となり、ビル群の屋上をつなぐ緑の回廊を目指して発足しました。目標は単なる景観改善だけではなく、大気中のCO2を建物全体で吸収し、使用エネルギーを再生可能エネルギーに転換することで、ビル一帯をカーボンニュートラルにすることでした。週末には近隣に暮らす老若男女がスコップ片手に集い、ミツバチの巣箱や、絶滅危惧種の草花を手植えして、屋上を「生きている公園」に育て上げています。
地元で働く会社員の井原直也(29)は、「ランチタイムに緑の中でおにぎりを食べていると、不思議と心がほぐれるんです」と笑顔を見せます。屋上にはベンチや手入れされた小道も設けられ、都会に住む人々の憩いの場として瞬く間に人気スポットに。ここで撮影された“ホシゴイと小学生のあいさつ”という写真はSNSで拡散され、多くの「癒やされました」「自分たちの街にもほしい」といった声が寄せられています。
プロジェクトが最も大切にしているのが、生物多様性の確保です。毎月、環境保全団体の研究者・別所理沙(41)による観察会が開かれます。「最初に植えた苗は20種類ほどでしたが、2年目には鳥や風で運ばれてきた種で50種以上になりました。都会でも命が循環する小さな森をつくれるのだと実感しています」と別所さんは語ります。昨冬には絶滅危惧種だったミゾベリタナゴが人工池で目撃され、住民たちの努力に光が差しました。
ごみの分別と堆肥化も徹底され、ビル内で出た紙や生ごみは堆肥となり、再び屋上の畑や花壇の大地へと還ります。季節ごとは屋上でマルシェが開催され、収穫したトマトやハーブが並ぶと、近所の親子や外国人観光客までも買い求めに訪れ、笑顔が絶えません。川瀬さんは「屋上の緑化が、人と人、人と自然をもう一度結び直してくれたように思う」と語ります。
大都市の空に広がる小さな森は、ゼロエミッションと生物多様性、そして地域の優しさを育んでいます。「自分も何か始めてみよう」と思わせてくれる心あたたまる取り組みが、いま静かに広がり続けています。
コメント
子どもたちが自然とふれ合える場所が東京にできたなんて感動です!今度の休日、ぜひ家族で遊びに行きたいと思います。こんな素敵な取り組み、全国にも広がると嬉しいなあ。
私の若い頃は土や植物は田舎にしかなかったものですが、高層ビルの上にこんな森ができるなんて時代は進歩しましたね。孫と一緒に観察会に参加してみたいです。心が温まるニュースでした。
学校で環境問題を勉強してますが、実際に町全体でゼロエミッションを目指すのってすごくかっこいいです!私もボランティアとしてお手伝いできたらいいなって感じました。
この屋上緑化、うちの窓からも見えてたんです。緑が増えると本当に気持ちいいし、空気もなんだか違う気がします。町がひとつになるって、こういうことなんですね。
東京観光のときにたまたまマルシェに立ち寄りました!都会でこんなに自然と触れ合えるとは思ってなかったので、すごくうれしかったです。外国人にもおすすめしたい素敵なスポットですね。