高齢化が進む中、認知症を持つ高齢者が安心して過ごせる居場所が求められるようになっている。そんな中、宮城県仙台市の商店街に小さな変化が訪れた。白川一隆さん(74)は、30年来の親友であり認知症の診断を受けた安藤宗男さん(77)を励ますため、地域住民と協力して「おしゃべりカフェ・ひだまり」を立ち上げた。このカフェは、認知症を持つ高齢者とその友人・家族が毎日自由に立ち寄り、会話と笑いを楽しむことを目的としている。
「宗男が“最近、昔の話を思い出せなくなってさみしい”と言った時、自分も急に胸が苦しくなりました。でも、昔から趣味でやってきた作り話や、好きな詩を朗読する会話が自然と周囲を笑顔にすることを思い出し、みんなで集まる場所を作ろうと決意したんです」と白川さんは語る。当初は10人ほどが集まるささやかな集まりだったが、口コミやSNSを通じて話題となり、今では地域の高齢者や中学生ボランティアたちも顔を見せるようになった。週に一度の「物語あそび」や、音楽セッション、ぬいぐるみ作りなど、文化活動の輪が自然と広がっている。
カフェでは偶然の再会も多い。安藤さんが幼少期の思い出話をしていた時、偶然居合わせた女性客が「私、その時あなたと凧揚げした近所の子です!」と声をかけ、数十年ぶりに友情が再燃。その場にいた人々も拍手で祝福したという。こうした心温まるエピソードが続々と生まれ、地域に新たな絆が生まれている。
地域の中学生グループ「みらいのたね」は、自発的にお手伝いを始め、カフェでの折り紙教室や、演劇の真似事も開催するようになった。「高齢者の方と話すことで、お互いに元気をもらっています。昔遊びや詩の朗読を教えてもらうのが楽しいです」と、中川花音さん(15)は笑顔を見せる。住民同士の心の距離がぐっと縮まり、カフェを訪れるすべての人が安心して本音を語れる場となっている。
東京福祉大学の長瀬和巳准教授(老年福祉学)は「認知症当事者が自分の役割を持ち、地域と自然につながれる場は非常に貴重です。友人の力と文化活動が本人を安心させ、自発性を引き出すのです」とアドバイス。SNS上でも「こんな優しい場所が全国に増えますように」「地域みんなで人生を楽しむヒントをもらった」といった声が寄せられている。おしゃべりカフェ・ひだまりは、これからも小さな奇跡を見守り続けるだろう。
コメント
認知症のおじいちゃんと一緒に暮らしているので、こういったカフェが近くにもあったら本当に嬉しいです。家族も少しほっとできそうで、あたたかな場所だと思いました。
高齢の身としては、心からホッとするニュースでした。昔の友達と会って話をする場所がもっと増えると、生きがいにもなりますね。白川さんと安藤さんの友情に胸が熱くなります。
中学生のみなさんが積極的に関わっているのが素敵!世代を越えて交流できる場所って今なかなかないから、私も次に帰省したら一度見学に行ってみたいです。
近所で噂は聞いてたけど、ここまで心温まるストーリーがあったとは!偶然の再会エピソード、めっちゃ感動しました。自分ももっと地域の行事とかに顔出してみようと思いました。
最近は悲しいニュースが多い中、久々にほっこりとした気分になりました。こういう『小さな奇跡』が広がっていけば、町がもっと優しくなりますね。白川さんの行動力に拍手です!