毎月第一日曜日、東北地方の穏やかな里山にある桃賀町では、ちょっと変わったイベントが開かれている。“道具たちのありがとうデー”と名付けられたこの集まりは、町の人々と愛用の日用品たちが、互いに感謝を伝え合うためのお祭りだ。便利さや新しさが追い求められる現代にあって、桃賀町のあたたかな風景が静かな注目を集め始めている。
最初のきっかけは、町の雑貨店を営む柳場雅代さん(61)が話し出した一言だった。「掃除機って、毎日黙々と働いてくれてるのよね。たまには褒めてあげたいって思って」。それを聞いた町内会の面々が共感し、今年春から『ありがとうデー』が始まった。柳場さんは使い古したコードレス掃除機の上に、手作りの花冠をそっと載せ、“これまで本当に助けてくれてありがとう”と語りかける。すると、町では不思議なことが起こり始めた。
半年前、腰痛を患った主婦の北瀬裕子さん(48)は、家で長年愛用していた肘掛け椅子に日頃の感謝を込めてリボンを結んだ。その日以来、不思議と椅子の座り心地が前よりふんわり柔らかくなったという。SNSでも『ありがとうデーに参加してからサーキュレーターの風が優しく感じる』といった報告が増え始め、町の子どもたちは“お掃除ロボが歌いながら部屋を回るようになった”と噂するようになった。
イベント当日、町の広場では住民たちが椅子や掃除機、サーキュレーターなどを持ち寄り、みんなで手を取り合い道具に向かって感謝を伝える姿が見られる。スマート家電にも話しかけると、まるで返事をするかのようにボタンが点滅したり、ファンが柔らかく回る演出が起きることも。小学生の宇賀神翔(12)は「うちの椅子に『ありがとう』って言ったら、次の日から勉強がすごくはかどるようになりました!」と笑顔を見せる。
町外からも見学者が訪れるようになり、県立大学で民俗学を研究する庄野教授は「道具を大切に想う気持ちが、持ち主自身にも幸せをもたらしている。この現象は今や、地域のコミュニケーションやセルフケアの新しい形になっています」と語る。桃賀町の“ありがとうデー”は、今後も道具と人とのあいだに小さな奇跡を運び続けてくれそうだ。
コメント
うちも息子と一緒に参加してみたくなりました!毎日使っている物にあらためて『ありがとう』って言うだけで、なんだか心があったかくなる気がします。素敵な町ですね。
こんな優しいお祭り、昔の日本を思い出してじんわりしました。道具でも人でも、感謝の気持ちは忘れちゃいけませんな。ほっこりさせてもらいました、ありがとう。
えー、道具にお礼いうと不思議なことって本当にあるのかちょっと疑問だけど、やってみると意外と気分よくなりそう!今夜さっそく自分の勉強机に『ありがとう』言ってみます~☺️
桃賀町のお祭り、実は去年見学しました!みなさん笑顔で道具に話しかけてて、見ているだけで幸せな気持ちになりました。ウチの古い扇風機にも今度声かけてみます。
民俗学を学んでる身として、道具との対話が町のウェルビーイングに繋がっているのが素敵だなって思いました。便利さの裏で、こんな温かい物語が生まれる場所がもっと増えてほしいです。