霧が立ち込める信州の山あい、長年過疎に悩まされていた小さな村で、今、村人たちの笑顔と活気を呼び戻す不思議な「森のサウナ発電所」が注目を集めている。その仕組みも発想も世界初。世代も職業も超えて集まるこの場所は、気候と人の未来に温かな灯りをともしている。
「最初は、蒸気で発電なんて冗談だと思ってました」と、プロジェクト発起人の川野士道(かわのしどう・村役場職員・45)は笑う。豊かな樹々と清流に囲まれた村には、かつて林業の残材や間伐材が活かされず、冬には大量の薪が余っていた。そんな中、サウナ好きとして有名な老舗旅館の女将・時山サヤ(ときやまさや・62)が、「サウナの蒸気で村の電気が作れたら、みんなで温まれるし地球にもやさしいわよね」と発言。この一言が村中に広まり、“森のサウナ発電”構想が動き出した。
地元の製材技師や高校生たち、遠く離れた大学のエネルギー工学サークルがリモートで協力。余った間伐材を薪サウナでゆっくり燃やし、発生した熱と蒸気圧を利用して新開発のマイクロタービンを回す。発電されたグリーン電力は村の集会所や保育所、さらに電気自動車の共有ステーションにも送られている。土日には親子連れがユーカリの枝を蒸してアロマサウナを楽しみ、平日夜は高齢者同士がほのぼの語り合う『村サウナ部』の場としてにぎわいを見せている。
さらに、発電プロセスにおいて消費される薪とサウナでの熱利用、そして木炭による土壌改良が一体化。地元の森は健やかに育ち、生物多様性も回復。地域で人気の「森のサウナコロッケ」にはこの土壌で育てた野菜が使われ、「エネルギーと自然がいっしょになった」と村の小学生たちが誇らしげに語る。
SNSでは「未来はこんな優しさで動いてほしい」「サウナ好きとして聖地化…行ってみたい」の声が続出。気候変動への思いと、世代を超えたゆるやかな絆。取材の最後、村に移住したばかりの木村一樹(きむらかずき・ITエンジニア・29)は、「この村ではエネルギーも人も循環している気がします」と微笑む。今、小さな村の森とサウナのあいだに、新しいエネルギーの輪が生まれている。
コメント
子育て中の母です。自然の中で子どもと一緒にエネルギーについて学べる場所ができて本当に羨ましいです!森のサウナで野菜までおいしくなるなんて最高ですね♪
定年後に移住先を探している者ですが、こうした村の取り組みには心から共感します。人の輪と温もりが、何よりも貴重に感じました。いつかサウナ部にも参加してみたいものです。
なんか、めちゃくちゃ未来感あってワクワクしました!サウナと発電が一緒になるアイデア、エネルギー工学サークルも関わってるのが地味にアツい。現地で体験してみたいです!
近くの村でこんな素敵なプロジェクトがあるなんて知りませんでした。森も元気になって、みんな笑顔になれるって本当に理想的ですね。森のサウナコロッケ、絶対食べてみたいです♪
昔は村の人たちが集まって助け合っていたものです。このような温かい取り組みが生まれて、若い人もお年寄りもみんな和やかに過ごしている様子がとても懐かしく、嬉しくて涙が出ました。