青空に浮かぶいくつものカラフルな風船――町の小学校で、教師と児童が心をひとつにしたある試みが静かな旋風を巻き起こしている。学びの形を見つめ直したいという思いから始まった“小さな願い風船プロジェクト”が、いま全国の教育界でも話題を集めている。
新山小学校の6年1組担任・緑川理沙先生(34)は、教師歴10年目の春、子どもたちと“みんなのやってみたい勉強”について話し合う時間を設けた。黒板に書き出された「化石掘り」「ドラゴンを育てたい」「世界中の朝ごはんを食べてみたい」といったユニークな声に、教職員室でも小さな笑いが弾けたという。
しかし、子どもたちの願いはただの夢物語では終わらなかった。“願いをカリキュラムにしてみたい”――そこから学期初め、全校児童83名と教職員で「願い風船」に夢を一つずつ書き込み、町のグラウンドから一斉に空へ放つことに決まった。その様子を見守った町民からは「こんなに胸が温かくなる行事は初めて」との声が上がった。
風船には、送り主の名前と願い事、そして『この夢を応援してくれる人がいれば手紙をください』という一文が添えられた。数日後、近隣の村や遠く離れた山里から大人たちの手紙や贈り物が学校に届くように。例えば、山野ガイドの竹之内透さん(56)は“化石掘り”を夢見る5年生に特製地層模型をプレゼントし、一緒に発掘体験をするワークショップを開いた。
こうして、学期ごとに集まった“風船の夢”は、リアルな体験を重ねて新しいカリキュラムとなっていった。音楽の授業は世界の朝ごはんを調理して食文化を知るプロジェクトに。体育では地元の高齢者を招いてユニークな玉入れ大会が行われた。教科の枠を超えた学びが、地域の人々やSNSを通じて広がっていく。ある保護者は「自分の子どもも教える先生たちも、一緒にワクワクできる場がここにある」とコメントを寄せた。
教師たちからは「子どもと一緒に“夢を本気で考える学び”が、気付けば自分自身の成長にもつながっていた」との声も多い。この“願い風船カリキュラム”は今、町内だけでなく、多くの学校や教育機関からの問い合わせが絶えない。新しい学びは、小さな風船が空に舞い上がる瞬間から始まるのかもしれない。
コメント
素敵なプロジェクトですね!子どもたちの小さな夢がこうやって地域全体で応援される姿に感動しました。うちの子の学校でも、こんな取り組みがあったらいいなぁと思います。
わしも玉入れ大会に呼んでもらえて、本当にうれしかったです。昔の子ども会みたいなあたたかさを思い出しました。これからも町ぐるみで子どもたちを見守っていきたいですね。
ドラゴンを育てたいって夢、すごくおもしろい!大人もまじめに付き合ってくれる学校、めっちゃいいですね。わたしの学校ももっと自由に意見言えたらいいなと思いました。
こういう活動が広がると、町全体がなんだか明るくなりますね。うちも『世界の朝ごはん』のときに何か焼き立てパンで協力できたらいいな、と読んでワクワクしました。
読んで心がほんわかしました。大人も子どもも一緒になって夢をカリキュラムにするなんて、現実の社会でもっと広がればすごく素敵なことだと思います!