ロボットアームが奏でる“まちのオーケストラ”──小さな町を包み込む心温まる協奏曲

古い工場内でロボットアームが楽器を演奏し、子どもやお年寄りが見守っている場面の写真。 ロボット工学
廃工場で開かれた“まちのオーケストラ”には、町のさまざまな世代が集いました。

今春、北海道の小さな町・音稜町で、住民たちの心を和ませる一風変わった“オーケストラ”が静かに話題を集めている。工場だった場所に設置されたのは、最先端の自律移動ロボットアームたち。しかも、ただの産業機械ではない。町の子どもたちやお年寄り、市役所職員までがオンラインで「指揮者体験」を楽しめる、“みんなのため”の協奏団なのだ。

音稜町の元工場長・萩原勇作さん(67)は、町の過疎化やコミュニティの希薄化をずっと心配していた。「この場所を閉じるのは寂しかった。でも、子どもたちがはしゃいだり、高齢者が集ってお茶飲み話をしたりする光景がもう一度戻ってきたら──と考えたんです」。そこで、萩原さんと地元のエンジニア・西河玲子さん(31)が中心となり、廃工場の設備に少しずつ改良を加え始めた。使われていたロボットアームにセンサーや音響ソフトウェアを追加し、クラウド経由で町の誰もが“遠隔演奏”に参加できる仕組みを作り上げたのだ。

『まちのオーケストラ』プロジェクトが始まった日、最初に鳴ったのは、お年寄りサークル『ひだまり会』の皆さんが演奏した『ふるさと』。ロボットアームが滑らかにシロフォンやカスタネットを叩きながら、優しい音色を響かせる。会場は涙ぐむ人や拍手する子どもたちでいっぱいになったという。その後は、町の幼稚園児たちが作った即興曲や、高校生バンドとのコラボも実現し、毎日のように賑わいが続いている。

遠隔操作は、スマートフォンや町の公共タブレットから誰でも簡単に体験可能。「家にいながらみんなで一緒に演奏できてうれしい」「不器用だったけど、ロボと一緒なら自信が持てた」といった声が、SNS上でも次々と広がっている。音圧やリズムはAIが自動で調整してくれるため、小さな音も大切に拾い上げてくれるのも好評だ。

エンジニアの西河さんは、「目指したのは、“技術がみんなのささやかな幸せ”をそっと後押しする存在になること」と語る。今後は、季節ごとの合奏イベントや他地域とのオンライン交流も計画中だという。工場の機械に新たな命が吹き込まれ、世代や距離さえ越えるハーモニーが、静かな町の日常をあたたかく彩っている。

コメント

  1. うちの子も演奏体験したそうで、家に帰るなりずっと「楽しかった!」と話していました。新しい技術で町に笑顔が戻るって素敵ですね。運営のみなさんに感謝です。

  2. まさかロボットと一緒にふるさとを演奏できる日が来るとは…。年をとってからも、こうやって仲間と集まれる場所ができて嬉しい限りです。

  3. 私たちバンドもコラボさせてもらいました!普段と違ってちょっとドキドキしたけど、みんなで作り上げる感じが最高でした。また参加したいです♪

  4. 廃工場がどんどん元気になっていくのを見るとこっちまで元気がもらえます。散歩の途中で覗くのが毎日の楽しみになりました。

  5. 孫と一緒に遠くから演奏に参加できて、とても心が温まりました。技術って難しいものかと思っていましたが、とても優しい気持ちにさせてもらいました。