その日、韓国の主要音楽チャートに異変が起きた。朝からチャート上位に見慣れない曲名が続々現れ、誰もが目を疑った。そこに並ぶのは、まだプロデューサーにも見出されていない無名の新人たちの楽曲や、バラエティ番組で急遽結成された素人グループの歌、果ては作曲少年少女の一人ひとりの作品名――。ユーザー数百万を抱える音楽サイト「コユン」が突如仕掛けた“願いのチャート”キャンペーンの一環だった。
きっかけは、プロデューサーのキム・ヒョンス(38)が深夜ラジオで語った言葉。「ランキングに一度でいいから自分の曲を載せてみたい」――そんな夢を持つ人がどれほど多いかを知り、番組スタッフとともに何か温かな仕掛けはできないかと考えた。そこで「コユン」に相談を持ちかけたところ、音楽チャート運営チームを率いるパク・ジェユン(35)が快諾。彼の「みんなの願いがチャートを彩ったらどれだけ楽しいだろう」という思いつきが、瞬く間に実現へと動き出したのだ。
特設ページにアクセスした誰もが、自作の楽曲を10秒だけアップロードでき、そのすべてが日替わりで1位に表示される仕組みが公表された。小学校の音楽クラブが廊下で練習した合唱や、定年退職後にギターを学び始めた会社員による弾き語り、友人と公園で録音したラップまで、ジャンルや技術を問わず、温かな励ましのコメントがSNS上に溢れた。
チャート入りを果たした大学生ユン・ソヒ(21)は「幼いころから作っては引き出しにしまっていた曲が、今日だけ世界に聴いてもらえるなんて涙が出そう。見知らぬ誰かの曲にも拍手を送りたい」と喜びを語った。ミュージックビデオを自作して一緒に投稿した家族バンド「ソン家」の末っ子ジホ(9)は「スタジオじゃなくてリビングで撮ったのに『可愛い!』『元気出た』とメッセージをもらってうれしかった」と満面の笑み。
突然“主役”となった無数の楽曲たちは、数日間だけだがやがて元のランキングへと戻った。しかし、“願いのチャート”で小さな夢の欠片たちが一斉に光を放ったことは、音楽ファンのみならず、多くの市民の日常にも柔らかな灯りをともした。SNSでは「知らない人の歌が勇気をくれた」「音楽の新しい朝がきた気分」といった声が続々と寄せられている。音楽業界アナリストのソ・ナリ(41)は「ヒットを競うだけでなく、それぞれの“願い”が可視化されたこの日こそ、多様な輝きがチャートを照らした記念日だ」と話している。
“もしあの日、あなたの作った歌が世界で一番聴かれる曲になったら?”という合言葉に背中を押された数えきれない人々。そのひとつひとつの歌が、今もどこかで誰かの心を温めているにちがいない。
コメント
子どもたちにも自分で作った歌を聴いてもらえる世界があるんだよ、と話してあげたくなります。音楽って人の心をつなげる力があるなあと改めて感じました。素敵な企画ですね!
最近ギターを始めて、自分も小さな曲を作ってみたくなっていたので、とても勇気をもらえました。年齢も経歴も関係なくチャレンジする気持ちを応援してくれる取り組みに、拍手を送りたいです。
こういう温かいイベント、もっと増えてほしいな。自分もよく引き出しの中で眠らせてた詞がたくさんあるので、もしチャンスがあったら挑戦してみたいです!参加した皆さん、お疲れ様でした!
世の中まだまだ捨てたもんじゃないですねえ。誰もが主役になれる日が来るなんて、わしの若いころには考えられませんでした。きっと聴いて元気をもらった人も多かったのでしょう。
なんだか読んでるだけであったかい気持ちになっちゃいました!普段のチャートだと有名なアーティストばっかだけど、こんな日があったらきっともっと音楽が好きになると思う!