ビジター席が生んだ感動の大合唱 偶然の応援歌で選手も街もひとつに

満員の野球場で、地元とビジターのファンたちが一緒に歌い、笑顔を交わしている様子。 スポーツ観戦文化
由良湾スタジアムに響いた、チームの垣根を越えた合唱の瞬間。

静かな港町、由良湾スタジアムが今年春、思いもよらぬ“歌声”で包まれた。巨人リンドーバイオンズがビジターとして訪れたある野球の試合。対戦相手の地元・由良セイラーズのファン、そしてわずか30席だけ設けられたリンドーバイオンズ応援団が一緒に歌い出したのは、両チームではおなじみの応援歌でも得点の掛け声でもなく、世代を超えて親しまれる童謡だった。

当日、球場には地元とビジターファン合わせて5000人が詰めかけた。リンドーバイオンズ応援団のまとめ役、布田精作さん(45)はこう語る。「普段はビジター席で肩身が狭い思いをしていたけれど、この日は周りの由良セイラーズファンも優しかった。それぞれのチームが点を取るたびに拍手を送り合ったんです」。

6回裏、突然スタジアムのスピーカーから流れたのは、海辺の町で世代に愛されてきた『浜辺のうた』。小学生からお年寄りまで誰もが知る曲だ。1塁側の主婦グループが自然とハミングを始め、3塁側ビジター席の親子も続いた。やがて応援団が「一緒に歌おう!」と呼びかけると、球場全体が大きな合唱に包まれた。

その様子を目の当たりにした由良セイラーズの松戸翔吾選手(28)は後日、「あの日、ファンの歌声に背中を押されました。ビジターの応援団とも気軽に手を振り合って、ほんとうにスポーツの力を感じた」とSNSに投稿。その投稿は瞬く間に拡散され、『応援歌で町がひとつになるなんて涙が出る』『現地観戦の幸せを思い出した』など、多くの共感のコメントが寄せられた。

試合は延長10回、ビジターのリンドーバイオンズが1点をもぎ取り勝利したが、敗れた由良セイラーズ側スタンドからも自然と惜しみない拍手。布田さんは「応援歌は勝ち負けを超えて、みんなを笑顔にした」と満足そうに振り返る。町の喫茶店の壁にはその夜の写真が飾られ、今では“第3の応援歌”として町中で歌声が聞かれるという。スポーツ観戦がくれる、温かな奇跡の一日となった。

コメント

  1. 子どもと一緒に読んで心がほっこりしました。応援歌がみんなをつなげてくれるなんて素敵です!今度由良スタジアムに行きたくなっちゃいました。

  2. 長年由良町に住んでおります。あの浜辺のうたがまた町に流れるなんて、昔を思い出して胸が温かくなりました。これからもスポーツで笑顔が広がる町であってほしいです。

  3. この記事読んで、なんか元気出てきました!部活の応援もそうだけど、知らない人たちと一緒に盛り上がるのって最高ですよね。スポーツってすごい。

  4. 近所の喫茶店で写真見ましたよ!あの日の雰囲気が今も町を優しく包んでいる気がします。こうやって町が一つになれる瞬間、ずっと大切にしていきたいな。

  5. 普段アウェーは肩身狭いけど、こういうエピソード最高ッス!由良のみなさんにも感謝~。勝ち負けだけじゃなくて、思い出になる1日でしたね。