海と山に挟まれた岐阜県木曽谷町は、人口三千人ほどの静かな町。この町が今、全国から注目を浴びている。どの家庭の食卓にも“無駄がない”、そんな理想が実現しつつあるのだ。その背景には、町ぐるみのちょっと変わった取り組みと、住民たちの温かなつながりがあった。
木曽谷町には元々、食事を人と分け合う習慣が根付いていたが、近年、フードロス削減のために導入した「まかないボックス」が話題を呼んでいる。毎週金曜日、町内20カ所に置かれるカラフルな箱。これは、各家庭や店に余った食材や調理済みのおかずを『まかない』として入れ、誰でも持ち帰れる仕組みだ。驚くことに、ここに入れられるのは、賞味期限が近いものや余ったお米、さらには地元で採れすぎた野菜など、多岐に渡る。
この仕組みを支えるのは、「もったいない相談員」と呼ばれるボランティアたちだ。町で一番若い小学生から、80歳を超えるおばあちゃんまで世代を超えて活躍している。「最近は子どもたちも自分で野菜を持ってきてくれるようになりました」と語るのは、相談員歴15年の吉岡誠一(65)。「自分が食べきれないからじゃなく、みんなで分け合えばもっと幸せになる。そんな想いが広がっています」。
加えて町独自のアプリ『くるくる賞味期限』も誕生。スマホに家の食材を登録すると、残り日数に応じてレシピとレスキューリストが届く。冷蔵庫の中に眠っていたカボチャが、アプリの提案で見事なスープに変身した、といったエピソードもSNSでは多く報告されている。町の公式SNSには「お隣のまかないで救われた夕飯」「忘れていた食材、アプリで賢く消費」といった投稿が日々並ぶ。
集まった食材や料理の一部は、毎月最終水曜日、小さな市場広場で開かれる『フードパントリーフェスタ』で無料配布。ここでは食育イベントや小学生向けの料理教室、寄付食品でのチャリティ炊き出しも実施されている。先月のフェスタでは、6歳の園児が自分で包んだおにぎりを老人クラブにプレゼント。「昔のおふくろの味だ」と涙ぐむ人の姿も見られた。
町の内外から注目を集める木曽谷町の挑戦について、環境社会学者の松久史郎(58)は「町民のあたたかな交流が、システムだけでなく心のフードロスまで減らしている。本当に大切なことは、もらったり分けたりする喜び自体なんだと気づかされます」と話す。お裾分けの輪がやさしく広がる町では、『いただきます』の言葉と一緒に、今日も誰かの笑顔が増えている。
コメント
こんな素敵な取り組みが広がったら、子どもたちも自然と“もったいない”の気持ちが育ちそうですね。わが家もぜひ真似したい!木曽谷町のみなさん、本当に素晴らしいです。
子どものころ、近所とおかずを分け合った懐かしい記憶がよみがえりました。若い人からお年寄りまで力を合わせている町の姿に、心があったかくなりました。
まかないボックス、めっちゃ実用的じゃん!ひとり暮らしだと食材余らせがちだから、こういう仕組みが地元にもあれば助かるのになー。アプリもハイテクで面白そう!
お向かいのまかないで救われた~ってエピソード、読んでるだけでほっこりしました。うちの町にも相談員さんや、こういうイベントができたら楽しそうです。
毎週ボックスをのぞくのが楽しみになりそう!子どもと一緒に食材を持って行ったり、もらって帰ったり…食卓での会話も増えそうです。こんな町、憧れちゃいます。