朝の通勤通学でにぎわうとある市の駅前。今、ここが静かな話題の中心となっている。なんと、駅前ロータリー周辺の横断歩道が、夜明けとともに虹色の“手編みクロス”へと姿を変えていたのだ。ありふれたコンクリートの白線が、毛糸のぬくもりとカラフルなデザインで包まれる光景に、立ち止まる人々の表情が自然とやわらぐ。
きっかけを作ったのは、UI/UXデザイナーの杉森奏多さん(38)。彼が小さなギャラリーで提案した「人と人、道と道をやさしくつなぐレイアウト」というテーマのワークショップに、地元の主婦グループ『虹の環』や高齢者会、近くの美術専門学校の学生たちが共感し、思い思いのスタイルで参加。当初はフェンスの装飾だったが、“人が一緒に歩む場所だからこそ、優しいグラフィックが似合うはず”との子供たちの声をきっかけに、次第に横断歩道へプロジェクトが広がった。
製作は想像以上に手間がかかった。朝焼けが昇る前、寒い中でも住民たちが集合。学生たちは新しいフォントデザインでユニークな虹の模様を描き出し、高齢者は丹精込めて毛糸を編み、毎回少しずつシグネチャースタイルの並びや色彩が増えていく。出勤前の会社員や子どもたちまでもが、“今日のパターンはどんなだろう”と足早ではなく足並みを揃えて進むようになったという。
SNSでは早速話題になり、「今日の虹はハート型」「わたしの使ったグレーの毛糸が駅前で目立ってる!」といった住民のコメントや、“見知らぬ人にも『行ってらっしゃい』と言いたくなる街になった”という温かい反応も広がっている。写真愛好家の三浦理絵さん(52)は、「朝の光に映える色彩と笑顔を撮るのが日課になりました」と話す。
この手編みの虹色横断歩道は、期間限定のデジタルインスタレーションとなり、日没後はLEDと連動し、メタバース上で仮想再現されるサービスも始まった。小さなアイデアから生まれたプロジェクトが、人々の一歩一歩をやさしく包み込みながら、あたたかな絆を編み上げている。杉森さんは、「デザインの力は、ただ美しいだけでなく、人の心をほんの少し優しくできると改めて感じました」と語る。今後、他の市にもこの“やさしさデザイン”の輪が広がるかもしれない。
コメント
毎朝子どもと横断歩道を渡るのがちょっとした楽しみになりました。あんなにカラフルで温かみのあるデザイン、子どもも私も元気をもらっています。住民のみなさん、本当にありがとう!
歳をとるとなかなか新しいことにワクワクしませんが、手編みの虹の横断歩道を初めて見た時は思わず笑顔がこぼれました。寒い中編んでくださった皆さんの気持ち、ちゃんと伝わっていますよ。
駅前で友達と待ち合わせするとき、虹色の横断歩道のおかげでパッと気分が明るくなります。自分も何か街のためにできること考えたくなりました。最高です!
最初噂で聞いたときは「また面白いことやってるな〜」って半信半疑だったけど、実物は写真以上に素敵!思わずSNS用に写真撮っちゃいました。毎日ちょっとした幸せを感じます。
朝の忙しい時間に、ふと足を止めて横断歩道を見上げたら、毛糸の虹が広がっていて癒されました。こういう温かなアイデアがもっと広がってほしいですね。