通勤電車で広がる“ありがとう運動” 小さな感謝が街を変える

朝の混雑した日本の通勤電車内で、マスク姿の乗客たちがやさしく会釈を交わす様子。 生活習慣とマナー
マルヒコ線の車内では、マスク越しの小さな感謝が温かく連鎖している。

込み合う朝の電車、疲れた顔が並ぶ中で、誰かの優しい一言がときに一日の景色を変える——。北関東を走るマルヒコ線で、予期せぬ「ありがとう」の連鎖が巻き起こり、SNSを中心に温かな話題となっている。“マスク越し”で気づき合う小さな礼儀や挨拶が、思いもよらない波紋を広げている。

きっかけは会社員の山北紗良(やまきた・さら、32)。毎朝同じ車両に乗る彼女は、混雑の中でお年寄りに席を譲った人へ、マスクのほほえみとともに「ありがとうございます」と声をかけ続けてきた。最初はお礼を言われた人も戸惑っていたが、徐々に慣れていき、一ヶ月後には車内のあちこちで「ありがとう」の声が響くように。山北さんは「感謝の言葉は、不思議と続いていくものですね」と笑顔で語る。

学生の田里天馬(たざと・てんま、15)は、電車内で落とした参考書を、見知らぬサラリーマンに拾ってもらった際、その人が小声で「大丈夫ですよ」と笑いながら渡してくれたことを思い出す。「自然にありがとうって言えた気がする。最近、ほかの人もみんな小さな親切をやってみてる」。こうした言葉のやり取りは、いつの間にか“マルヒコ朝感謝ラッシュ”と呼ばれ、SNSでは乗客たちによる“#電車で感謝”の投稿であふれている。

清掃スタッフの古田比呂子(ふるた・ひろこ、59)は、「以前は誰とも目を合わせずに掃除をしていました。でも、今では通勤客の何人かが必ず“いつもありがとう”と声をかけてくれるんです」と話す。マスクをつけているため、互いの口元は見えないが、手で軽く会釈をする“マスク会釈”が車内のあいさつマナーとして定着しはじめているという。

マナー研究家の池野梢(いけの・こずえ)は、「日本人は控えめなコミュニケーションを大切にしがちですが、言葉で伝える感謝は社会の潤滑油。コロナ禍以降、マスク越しだからこそ“声に出す大切さ”を再発見する動きが増えている」と指摘する。最近は、降車後にも改札口で「今日もありがとう」と挨拶を交わす光景や、「仕事とプライベートの緩やかな切替え」としてワークライフバランス向上まで感じる人も出てきた。このささやかな“ありがとう運動”が、日常の景色をやさしく染めている。

コメント

  1. 朝の電車って本当にギスギスしてる印象だったので、こういう“ありがとう運動”が広まってるのはうれしいです!子どもにも毎日感謝の気持ちを伝えようって伝えてるので、大人たちが実践してくれているのを見ると、ちょっとほっとします。

  2. いやぁ、わしもマルヒコ線を使う身ですが、最近ほんとうに挨拶されることが増えたと感じます。昔の日本もこんなふうに皆がやさしかった気がしますぞ。ありがとうの連鎖、もっと広がってほしいもんじゃ。

  3. 学生です!毎日通学のとき静かでちょっと緊張してた電車が、最近なんか空気が柔らかく感じるのはこのおかげかも。SNSで見てたけど、実際に体験できて嬉しいです!

  4. 家がマルヒコ線の駅近で、毎朝あの電車から降りてくる人たちがどこか明るくなった気がしてました。小さな「ありがとう」が街全体の雰囲気まで変えてる感じ、すごくいいですね。自分も見習ってみようかな。

  5. 素直に素敵だなと思います。正直、最初は『そんなの恥ずかしい』って思ったけど、この記事読んで、自分の行動もちょっとずつ変えてもいいのかも…って気持ちになりました。もっとやさしい社会になりますように。